投資信託を選ぶときに、おすすめランキングやYou Tuberの情報を頼りにすることが多いかもしれません。
「でも、その商品って結局なんなの?」と思ったことはありませんか?
最終的な投資判断をする際に、必ず確認したいものが「目論見書(もくろみしょ)」(投資信託説明書)です。インターネット証券で投資信託を買う際に、閲覧が必須になっている「あれ」です。対面の証券会社や銀行でも、担当者より必ず説明がされるはずです。ついつい流し読みをしてしまいがちですが、目論見書のなかには投資判断をするうえで重要な情報が詰まっていますので、必ず確認して理解するようにしましょう。
本コラムでは、取っつきにくい目論見書をできるだけ簡潔に理解できるように紹介していきます。
まずは、表紙です。表紙を一読するだけでも投資信託の全体像をつかむことができます。
ここでは、ネット上でも話題の「オルカン」を例にして解説します。
「オルカン」の正式名称は、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」となっています。名前を見ただけでも、「全世界の株式」に投資をすることがわかります。
次に、すぐ下の商品分類を見てみましょう。
単位型・追加型の項目では、「追加型」となっています。追加型とは、購入したいときにいつでも買えることを意味します。ちなみに、単位型の場合は、当初の決められた期間(募集期間)でしか買うことができません。
それ以外にも、投資対象地域や投資対象資産などの分類がされており、投資信託の特徴をおおまかに捉えることができます。
また、実際に運用をしている会社(委託会社)や、預かった資産の保管や管理をしている会社(受託会社)も表紙で確認することができます。
このケースでは、運用会社は三菱UFJアセットマネジメントで、資産の管理は三菱UFJ信託銀行が行っているとわかります。
次に、投資信託の目的を確認しましょう。
「そんなの投資家の資産を増やすことでしょ?」
と思われるかもしれませんが、そうではないケースもあります。
実際に見ていきましょう。
ファンドの目的・特色
左上の【ファンドの目的】を見ると、
「日本を含む先進国および新興国の株式市場の値動きに連動する投資成果をめざします。」となっています。
また、そのすぐ下の特色1では、
「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざして運用を行います。」
と書かれています。
少し解説します。
「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」と言うのは指数のことです。指数とは、その市場の値上がり値下がりを測る尺度のようなものです。日本株だと、日経平均株価が代表的な指数ですね。つまり、「オルカン」の投資目的は、「指数に連動させること」となります。したがって、投資家の資産を増やすことを目的にしているわけではありません。
※そもそも「インデックス=指数」を意味し、インデックスファンドは、基本的には「〇〇指数に連動させること」を目的としています。
ただ、「世界経済が長期的に成長し、世界の株価が上昇するのであれば、その尺度であるインデックスも上昇するはずだ。だからインデックスファンドも値上がりするだろう」というロジックは成立すると言えるでしょう。
そして、「オルカン」の目論見書では、「対象インデックスの国・地域別構成比率」もわかりやすく円グラフ(右図)にして記載しています。
参考までにアクティブファンドも見てみましょう。
ここでは、フィデリティ・世界割安成長株投信(2025年1月26日時点で、純資産残高上位のアクティブファンド)の目論見書を例にします。
【ファンドの目的】には、次のように書かれています。
「ファンドは、投資信託財産の成長を図ることを目的として運用を行ないます。」
投資家から預かった資産を増やすことを目的としていますね。また、どのように殖やすかのプロセスについても、その下の【ファンドの特色2,3】に明記されています。
2.企業の長期的な成長力と株価の割安度に着目し、企業の本源的価値を見極める運用を目指します。
3.個別銘柄選択にあたっては、世界の主要拠点のアナリストによる徹底的な企業分析や直接面談による調査を活かした「ボトム・アップ・アプローチ*」により、魅力的な 投資機会の発掘に注力します。
*ボトム・アップ・アプローチとは、綿密な個別企業調査活動を行なうことにより、企業の将来の成長性や財務内容などファン ダメンタルズを調査・分析し、その結果をもとに運用する手法です。
慣れていないと読みにくい部分もありますが、要するに「成長性のある企業を割安さにも注目して、投資先を選びます」ということですね。そして、具体的な運用のプロセスとしては、右図から読み取ることもできます。
次は、実際にどんなものに投資しているのかと、運用実績を確認してみましょう。順に読んでも良いのですが、いったん飛ばして具体的な投資先を確認します。
※再度「オルカン」の目論見書に戻って解説します。
【運用実績】のページを見ると、
中ほどに、【主要な資産の状況】という欄があります。ここに具体的な投資先や投資比率が書かれています。
例では、1位がマイクロソフトで、全体の3.9%分が投資されており、2位はアップルで3.5%となっています。これを見れば、自分のお金が最終的には何に投資されているかが明らかになり、イメージがつきやすくなるのではないでしょうか。
なお、この【運用実績】のページに記載がない場合や、もう少し詳しく確認したい場合は、併せてマンスリーレポート(月次報告書)を見るとよいでしょう。
そして、最も重要な項目の1つがリスクです。その投資信託を持つことでどのようなリスクが想定されているのかについて確認します。
【投資リスク】
最初に文章で書かれている項目です。(左図)
基準価額(投資信託の値段)の変動要因として、以下のような項目が挙げられています。
まずは価格変動リスク。「オルカン」は、世界の株式に投資をしているため、当然ながら株価の値上がり値下がりのリスクがあります。
次に為替変動リスクです。世界の株に投資をするということは、実質的には外貨建て資産を保有していますので、為替リスクが伴います。もし仮に10%の円高になった場合は、その分だけ基準価額が下がるリスクがあると言うわけです。
その他、信用リスクや流動リスク、カントリーリスクなどが挙げられています。
また、リスクを値動きの幅として表したものもあります。(右図)この例では、2019年5月末~2024年4月末までの実績を、年間の騰落率として示しています。一番左の茶色の棒グラフが「オルカン」の実績です。この期間中で、良い年は56.5%上昇したものの、悪い年は12.1%下落したことがわかります。その他の青色の棒グラフは、参考値として日本株や債券など他の資産クラスがどのような値動きをしたかを記載しています。
※海外株や海外債券などの場合は、為替変動も加味されていることがあり、昨今のような円安局面では、株価上昇だけでなく、為替の影響でプラスになっていることも多いことには注意が必要です。
ここまでで、おおよその商品性や実績、リスクについて理解できたのではないでしょうか。最後に、コストについても確認しておきましょう。
【ファンドの費用・税金】
購入時手数料とは、投資信託を購入する際にかかる手数料で、通常は内枠でかかります。手数料率が3.3%であれば、100万円購入すると約3.3万円(厳密な計算式は割愛します)が差し引かれて、約97万円が実質購入分になります。「オルカン」は「ありません。」となっていますので、購入時手数料は0%です。
なお、手数料がかかる商品でも、金融機関など販売チャネルによって手数料率が異なることがありますで、購入する金融機関に事前に確認するようにしましょう。
信託財産留保額とは、解約時にかかる費用です。
運用管理費用(信託報酬)は、保有期間中に間接的にかかる費用です。仮に1%であれば、年率1%分の費用が、投資信託の中の資産から日割りで差し引かれています。
いかがでしたでしょうか。細かい文字で専門用語が並んでいるとついつい流し読みしてしまいがちですが、読み方がわかって少しでも身近なものに感じていただけたら幸いです。
今回は、主に株式に投資をする投資信託を例に解説しましたが、債券型やミックスアセット型(バランス型)投資信託でも基本的な見方は同じです。
これから買おうとする投資信託や既に持っているものでも、改めて目論見書をしっかりと確認して、理解を深めてみてください。
※本コラムに記載のある個別金融商品については、あくまで例示であり、当該商品を推奨をするものではありません。
シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(CFP)
大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。その後、会計事務所系のコンサルティング会社を経て、2013年独立。ライフプランに沿って独立性・専門性の高い資産運用アドバイスを行うためシグマ株式会社を設立。
【講師実績】
NHK文化センター、名古屋証券取引所、高年大学鯱城学園、名古屋市中小企業振興会、地元上場企業、東海東京証券など
【座右の銘】
道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は戯言である
【趣味】
温泉旅行、キャンプ、登山、釣り、ワイン会、読書(特に歴史に関するもの)