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値下がりしても投資を続けるためには?


2022年2月10日

突然ですが、皆さんはどんな時に資産運用を辞めたいと思うでしょうか?

きっと、資産が大きく増えているときではなく、大きく目減りしてしまったときではないでしょうか。

「下がっても我慢して持ち続ける!」
と思ってはいても、ついつい怖くなってしまうこともありますね。

実際には、過去のデータでも下落局面で資金流出、上昇局面で資金流入となっています。

下記のデータは公募投信に対する資金流出入額と日経平均株価の推移です。

青色の棒グラフ(右軸)で上が流入、下が流出です。

一方でオレンジ色の折れ線グラフは日経平均株価の終値(左軸)です。

日経平均株価が上がると流入(買付)が多くなり、日経平均株価が下がると流出(売却)が多くなることが読み取れます。このデータからは株式市場が悪化したときに売却をして、その際に資産運用を辞めていこうと思うようになるのではないかと推測出来ます。

※公募投信への資金流入 投資信託協会より筆者作成

 

2003年から2007年の間、景気は順調に拡大しており、日経平均株価も上昇していく過程で沢山の資金が投資信託に流入しました。この時期はニュースでも株式ブームなどと取り上げられたこともあり、多くの方が、株式市場に新規参入しました。しかし2007年以降、予期せぬサブプライムショックを機に下落相場となり、投資信託を売る人も増えていきました。
そして、さらに2009年にはリーマンショックが起こり、がんばって継続保有していた人も損失がみるみる膨らんでいき、ついには怖くなって売ってしまった投資家も多いのでしょう。その後も同様で、全体相場が上がると投資信託を買う人は増え、暴落すると売られるという関係が見られます。このようなことから暴落時に運用を続けることがいかに難しいかが分かります。売らないほうが良いと頭では分かっていても、みるみる資産評価が落ちていくと、売却をした方がいいのかな、やめた方がいいのかなと考えてしまうのが人情ですね。

安心できる安定的な資産運用を続けていく上で、検討してみるべきことがあります。

それは「債券の活用」です。

資産運用は続けることが難しいのは上述の通りですが、続けるためには、債券の活用が重要だと考えます。特に60代以降など、収入が少なくなった方の人生設計(ライフプラン)を考える上で、重要な資産運用手段となります。なぜなら、債券には利息が定期的に支払われ、満期時には投資した元本が帰ってくるという性質があるからです。例えば、65歳でリタイアを迎えた方で、収入が年金のみの方ですと、まとまった資金が入用となる場合、大きく損を抱えている保有資産を売却する必要性が出るかもしれません。しかし債券を保有していれば、例えば株式市場がどんなに暴落しても、利息は安定的にもらえます。満期を迎えた資金や利息を活用すれば含み損が多い資産を売却する必要はないかもしれません。

 

資産運用を続けていく上で検討するべき事項がもう一つあります。

それは「資産配分の見直し」です。

 

保有資産全体のバランスで見るときには、『資産配分の全体バランス』を意識する必要があります。例えば、景気が好調で株式市場が順調であれば株式資産の評価は高くなり、債券資産の評価の上昇よりも株式資産のプラス評価(含み益)は大きくなるはずです。

下図の例では当初は1:1だった資産比率が、株式資産の値上がりにより、株式:債券が2:1となり資産全体のバランスが崩れてしまっています。それを元通りにするために、相対的に増えている資産を売却し、相対的に減っている資産を買います。このようなバランスを整える作業をリバランスと言います。

リバランスは基本的に、「定期的かつ機械的に行う」ことがセオリーです。
ただ、個人投資家の方がそのように行うことは困難な点もありますね。

なぜなら、リバランスは「上がっているものを売って、下がっているものを買う」ことになるからです。値上がりしている資産を持っていることは心地よいですし、それを売って下がっているものを買うことはとても勇気がいります。言うは易し、、、。かもしれません。

ただ、何年か前から運用をされている方は、この時期に一度リバランスを検討してもいいかもしれません。

その理由は環境が大きく変化しようとしているからです。

リーマンショック以降続いた世界的な低金利政策は、コロナ過においてさらに緩和的になりました。それが一因として米国株を中心に世界的な株高になっていることは周知の通りです。しかしながら、今後その政策が大きく転換されようとしています。インフレ率の上昇に伴い各国中央銀行は利上げを行おうとしているのです。

昨年(2021年)11月頃に米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は、量的緩和の縮小(テーパリング)を同月より開始すると発表がありました。

テーパリングとは、中央銀行が景気をサポートするために実施してきた国債などの資産の買い入れ(量的緩和)を段階的に縮小させていくことです。コロナ禍で落ち込んだ景気が回復してきており、金融面からのサポートを徐々に終了させる局面にきています。金融政策の転換点であり、市場参加者が注目しています。

一般的にテーパリング実施局面では、「利上げ」も意識されはじめ、金融引き締め環境が株式市場に悪い影響が出ることがあります。

「利上げ」とは、中央銀行が政策金利を引き上げることを指します。一般的に中央銀行は景気が過熱してくると、金利を引き上げる等の金融引き締めの金融政策を実施します。利上げが実施されると市場金利が上昇します。市場金利が上昇すると企業や個人の金利負担が増えます。(お金を借りるときにはより高い金利で借りなければなりません)。そうすると景気過熱にブレーキがかかり、加熱した景気を冷ますことができ、過度のインフレやバブルを抑えることができます。これが中央銀行の役割です。

株式相場の良い状況が続くと、保有資産全体の株式比率が高くなっている傾向にあります。そうすると利上げ局面では、株式資産の変動により資産評価のブレ(変動幅)が大きくなるかもしれません。冒頭で述べたように、株式市場に大幅下落が発生した時に債券運用の比率が高ければ、資産評価のブレ(変動幅)を抑えることができ、資産運用を辞めずに継続できるのではないでしょうか。

ライフプランや運用の目標に沿って改めて一度資産配分の見直しを含めて検討をしてみてはいかがでしょうか?

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執筆者  北 辰一郎

シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(CFP)

大学卒業後、大和証券に入社。 個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。営業表彰などを受賞。より地域に根差し、顧客本位な仕事をしたいと感じシグマ株式会社に入社。ファイナンシャルプランナーの上級資格である(CFP)を保有し、ライフプランに基づいた資産形成や資産運用のアドバイスはもちろんのこと相続や不動産など資産全般の相談に強みを持っている。
【趣味】 フットサル

【座右の銘】 思考は現実化する