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投信の分配金は本当に利益?

2015年9月8日


投信の分配金は本当に利益?

 今でも大人気の「毎月分配型」投資信託。投資初心者や、リタイア世代から高い支持を得ているように思います。国内の純資産ランキングでも1位から10位までの全てが、「毎月分配型」です。


2015年8月5日現在

 毎月、“お小遣い”のようにもらえる「分配金」が人気の秘訣なのですが、本当に“お小遣い”として考えていいのでしょうか?今回は、投資信託の分配金の仕組みについてお話します。

投資信託の値段、「基準価額」とは?

まずは、「分配金」を理解する前に、投資信託の仕組みについて学びましょう。

投資信託は、投資家の皆さんからお金を集めて、そのまとまったお金で株式や債券などを購入します。そしてそこから生み出された利益(値上がり益や配当、利息)を(もちろん損失も)投資家が受けることになります。なんとなくイメージとしてはわかると思いますが、具体的にはどんな仕組みになっているのでしょうか?

わかりやすくするために、とても小さな投資信託をイメージしてみます。投資家は太郎さんと花子さんの2人だけです。ちょうど今日、新しく設定されるA投資信託があり、1口につき1円で買えるそうです。このA投信に、太郎さんは60万円(60万口)、花子さんは40万円(40万口)ずつ投資することにします。A投信全体では、100万円の運用資産となりました。

ここで、投資信託を運用する会社を運用会社(○○アセットマネジメントなど)と言い、運用担当者のことをファンドマネージャーとも呼びます。

A投信の100万円もファンドマネージャーが投資先を決めてくれます。国内株式を投資対象とする投資信託であれば国内の株式に、海外株式を対象とするものは海外の株式にそれぞれ投資をします。

数か月後、A投信はファンドマネージャーが上手に運用をしてくれて、中身の運用資産が120万円になりました。このときの1口あたりの値段はいくらになったでしょうか?A投信全体では100万口ですから、1口あたりは1.2円ですね。
太郎さんは60万口保有していますから、太郎さんの評価額は72万円、同様に花子さんの評価額は48万円になったということです。

 通常、投資信託の値段は「基準価額」で表しますが、これは1万口あたりの値段のことを差します。上記のように、資産全体÷全口数で基準価額を算出します。

投資信託が設定された日の値段を10000円(1万口あたり)として、その後毎日計算をして基準価額を算出しているのです。
今回のA投信のケースだと最初の基準価額は10,000円で、上手に運用をしてくれたので数か月後に12,000円になったということです。

たくさんの人が買うと基準価額は上がる?

たまに、「たくさんの人が買えば、投資信託は値上がりしやすい。」と思っている人がいますが、そうではありません。
新たに投信を購入する人が増えると、投資信託にお金が流入するため、投信全体の資産は増えます。しかし、同時に口数も増えることになるため,直接的には基準価額が値上がりをすることはないのです。

分配金が出ると基準価額が下がる理由

さて、本題の「分配金」についてです。「分配金が出るとその分基準価額が下がる」ということはご存知のことと思いますが、そのカラクリも上記の考え方をするとわかりやすいかもしれません。

A投信は設定から数か月後に120万円になりました。(基準価額が12,000円になりました。)そこで仮に、1万口につき100円の分配金の支払いがあったとします。
太郎さんは60万口ですから6,000円、花子さんは40万口ですから4,000円を受け取れることになります。

このお金はもちろんA投信の資産から支払いますので、支払った後のA投信は119万円になりますね。この時の基準価額は、先ほどのように資産全体(119万円)÷全口数(100万口)で、11,900円となります。

基準価額だけの簡単な計算式にすると、分配金支払い前の基準価額(12,000円)-分配金(100円)=分配金支払い後の基準価額(11,900円)となります。

「分配金は利益ではないのですか?」というご質問をよく受けますが、上記のことから考えると、純粋な利益とは言えません。少なくとも、銀行の利息や株式の配当とは異なる性質のものと言えるでしょう。投資信託の資産から支払われるので、部分的な「解約金」に近いのかもしれません。

「毎月分配型」投信のほとんどの説明書(目論見書)にも以下のような文言が記載されています。

・分配金は、預貯金の利息とは異なり、投資信託の純資産 から支払われますので、分配金が支払われると、その金 額相当分、基準価額は下がります。

・分配金は、計算期間中に発生した収益(経費控除後の配当等収益および評価益を含む売買益)を超えて支払われる場合があります。その場合、当期決算日の基準価額は前期決算日と比べて下落することになります。また、分配金の水準 は、必ずしも計算期間におけるファンドの収益率を示すものではありません。

また、以下のような図も必ずといっていいほど掲載されています。

ここからも、投資信託の資産から「分配金」が支払われていることがわかります。