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資産が値下がりしても、投資がうまくいく3つの処方箋

2022年5月27日


今年に入り、インフレ懸念やウクライナ情勢から、世界の株式も大きく値下がりする局面がありました。このようなときに金融資産を保有していると不安になるのではないでしょうか。

もちろん書いている私も人間ですので、全く不安にならないかと言われるとそんなことはありません。

そんな時大事なことは、「いかに感情をコントロールするか」です。

そして感情をコントロールするためには、なぜそのような感情の変化が起こるのかを正しく理解することが必要です。

このコラムでは投資家がかかってしまう3つの病について、その原因と処方箋(解決策)を行動経済学の知識を活用しながら見ていきたいと思います。

 

病名

1.早く利益確定したい病

2.損切りできない病

3.生命保険解約できない病

 

1.早く利益確定したい病

(症状)

「保有している株式が、ある程度値上がりして含み益が増えてくると、利益を確定したくてたまらなくなってくる。そうすると保有株が「将来下がる可能性がある」というような記事ばかり目に入るようになってしまう。(例えば「この銘柄は割高だから早めに売った方がいい」などの記事)

その結果、「早く売らないと今の含み益がなくなり、含み損になってしまうかも。早く売って利益確定したい。」と焦ってしまい、もともと長期保有で考えていた銘柄を短期で売ってしまう。

(原因)

確証バイアス

自分に都合のいい情報を集めたがる。

この例では、保有銘柄が値上がりすると主張する記事には目もくれず、下がる関連の記事ばかりに偏って情報収集しています。

②現在志向バイアス

人間は将来の利得よりも現在の満足感を重視する傾向にある。近視眼性ともいう。

この例では、長期的に利益が期待できると考えて買った銘柄を、短期的な眼の前の利益が欲しいがために、短期で売却しています。

③損失回避性

人は損したくない気持ちが強い生き物である。ちなみに利益のうれしさに比べて損失のショックは2.25倍であり、これをプロスペクト理論という。

この例では損を出したくない気持ちが強いために、損する前に早く売ろうという気持ちに拍車がかかっています。

 

(処方箋)

・両方の意見を聞いて判断する。

投資を判断する際は反対の意見にも耳を傾けるように心がけましょう。

・短期的な欲をコントロールする

元々の投資目的や計画を思い出し、感情的に判断しないようにしましょう。

・購入時に、明確なルールを持つ
購入する際に、短期投資か長期投資かを決めたり、どういった状況になったら売るのかなど目標を定めておきましょう。

 

2.損切りできない病

(症状)

今保有している株式よりも良さそうな株式を見つけても、今保有している株式に含み損があるため売却することができない。また、乗り換えしたものが失敗することを恐れてしまい、「まあ今のままでいいか。今持っている銘柄も気に入って買ったものだから手放したくないし。ほっておいたらいずれ上がるだろう」となってしまう。結果、手元にはたくさんの塩漬け株が残る。

(原因)

①損失回避性

この例では保有株式が含み損をかかえており、より良い可能性がある銘柄があるにもかかわらず売却をためらっています。

②現状維持バイアス

今手元にあるものや自分がおかれた状態に大きな価値を見出し、新しい行動をためらう。

③保有効果

一度手にしたものは手放したくない。人は何かを手に入れたとき、それを保有していないときよりもそのモノの価値を高く評価する

この例では結果として保有している銘柄を手放したくない(保有効果)

→今のままでいいや(現状維持バイアス)となっています。

 

(処方箋)

・客観的になって考えてみる

「自分ではなく他の人がこの銘柄を保有していた場合、どうアドバイスするか」というように考えてみましょう。また、もしその銘柄を持っていなかったとしたら、今改めて買うのかを自問してみましょう。「買わない」=「今日以降は保有したくない」ということにもなります。

・感情で行動せずにデータを見て冷静に考える(これがなかなか難しいですが)

・売買に伴うメリット、デメリットをよく考える

売った銘柄がその後上がって買った銘柄がその後下がるなんて話は株の世界ではよくある話です。むやみやたらに行動するのは控えましょう。

 

最近「投資を新たに始めることができない」という悩みをよく耳にします。

これも現状維持バイアスと損失回避性が原因かもしれません

投資はプールで泳ぐのと一緒です。いくら泳ぎ方を勉強しても実際にプールに入って泳いでみないといつまでたっても泳げません。投資未経験の方はまずはプールに入りましょう(証券口座を開きましょう)

 

3.保険解約できない病

(症状)

数年前に契約した月払いの貯蓄性のある生命保険を解約して他の投資にあてたいのだが、今解約すると大きく元本割れをしてしまう。支払いの期間はまだかなり残っており、解約したほうが長い目で見ると良いことが明白でも、解約ができずにずっと保険料の支払いをダラダラと続けてしまう。

(原因)

①サンクコスト(埋没費用)

すでに払ってしまったもの、回収の見込みのない費用

損失確定を嫌って不合理な選択をしてしまう

この例では解約することによって今まで払ってきた保険料のほとんどが無駄になってしまうことがイヤで解約できずにいます。

②現在志向バイアス

人間は将来の利得よりも現在の満足感を重視する傾向にある。近視眼性ともいう。

この例では解約して他の金融商品に乗り換えることで「短期的には損だが長期的には利益」といった状況にもかかわらず、眼の前の損失の方を過大評価してしまうがために解約できずにいます。

 

(処方箋)

・「損=勉強代」「損=必要経費」だという風に考えて割り切る。

これに関しては性格によって実行するのが得意な方と苦手な方に分かれるかもしれません。

・短期的な目線で考えずに長期的な目線で考える

眼の前の損得で判断せず、本来の目的や本質をとらえて考えるようにしましょう。

「この生命保険はそもそも必要なのだろうか」「今自分に必要なのは保障ではなく資産形成ではないのか」など。

 

(総合カルテ)

 

行動経済学の知識で自分を客観的に見ましょう。

例えばご自身が偏った投資の情報収集をされていることにふと気づいた時は「あー、私は今確証バイアス(自分に都合のいい情報を集めたがる。)におちいっているなー」

 

なかなか損切りしたくてもできない場合は「そういえば③損失回避性っていうのが人間にはあるんだったなー。損を恐れて判断できなくなっている自分がいるな。ちょっと感情的にならずに冷静に分析して判断しよう」という風に考えるようにしてください。

 

感情のコントロールができるようになれば、きっと投資もうまくいくと思います。

それでも実際に行動に移すとなるとなかなか大変です。

もし「ご自身で感情をコントロールすることができない」「いつもいきあたりばったりな投資をしてうまくいかない」といった方がいらっしゃいましたら、当院シグマクリニックにお越しくださいませ。

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執筆者  藤原 達彦

シグマ株式会社 執行役員
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

九州大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事し、営業表彰などを受賞。今まで以上にお客様視点で物事を考え、一人でも多くのお客様の役に立ちたいとの考えからシグマ株式会社に入社。丁寧なヒアリングとライフプランからお客様毎の課題を明確にし、最適な資産運用提案を心がける。

【趣味】自己啓発、四季報の読破、お酒、トレーニング・ジョギング

【座右の銘】継続は力なり

【講師実績】 名古屋証券取引所IRエキスポ2017、2018