新NISAの登場から4ヶ月。今年から投資を始めた方も多くいらっしゃることと思います。この4ヶ月だけでも、投資環境は目まぐるしく変わりました。日本経済は円安の影響を強く受けており、2023年末に141円だったドル円相場は2024年4月29日には一時的にではありますが、160円に到達しました。また、米国のインフレの影響を受け、世界的にも株価の乱高下が続いています。このような不安定な時代に、特に投資初心者の方々へ向け、資産形成戦略をお伝えします。
〇NISAについて:2024年からNISAはどう変わった?
〇分散投資の効果:銘柄分散と時間分散のシミュレーション
〇投資初心者はつみたてNISAを使えばいい?
〇まとめ
NISA(ニーサ)は、少額からの投資を行う方のために2014年1月にスタートした「少額投資非課税制度」です。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかりますが、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になります。
※図は金融庁HPより引用
2024年1月から、NISAが制度変更され、売却益や配当金などの運用益が非課税となる点が維持されつつ、投資の枠組みが拡張されました。改訂された制度では、成長投資枠とつみたて投資枠の二つの投資枠が新設され、それぞれ異なる特性を持つ金融商品への投資が可能です。
※図は金融庁HPより引用
【つみたて投資枠】
年間投資枠: 120万円
非課税保有限度額(成長投資枠と合わせて): 1,800万円
対象商品: 販売手数料がかからず、信託報酬が一定以下の長期・積立・分散投資に適した投資信託
【成長投資枠】
年間投資枠: 240万円
非課税保有限度額: 1,200万円
対象商品: 株式、ETFなどの一定の条件を満たした幅広い商品
つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能です。
更新されたNISAの大きな特長は、非課税保有期間が無期限に延長され、非課税枠の再利用も可能になった点です。これにより、長期間にわたって投資を行うことができ、将来的な資金計画にも柔軟に対応できるようになりました。さらに、非課税保有限度額が大幅に拡大され、最大1,800万円までの投資が非課税で行えるようになりました。
分散投資は、リスクを抑えつつ長期的なリターンを目指す投資戦略です。具体的には、単一の銘柄や市場に集中投資することのリスクを避けるために、複数の銘柄や異なる地域の市場に投資を分散させる方法です。また、投資のタイミングを分散させることも、市場の変動リスクを低減する効果があります。
単一銘柄に全資産を投じることは、その銘柄特有のリスク(事業失敗、業界の構造変化など)に大きく影響を受け、非常にリスクが高くなります。一方で、複数の銘柄に資産を分散投資することにより、一つの銘柄が抱える固有のリスクを相殺し、全体のポートフォリオのリスクを低減できます。さらに、異なる業界やセクターに投資することで、特定の市場の下落が全体のパフォーマンスに与える影響を抑えることが可能です。
日経平均株価と国内銘柄の株価比較(期間:10年)
上記は過去10年間の日経平均株価と、トヨタ自動車、三菱UFJ銀行、楽天グループの株価推移の比較チャートです。どの会社も日本を代表する企業ですが、10年前に100万円を投資した場合、
日経平均株価:269.28万円
トヨタ自動車:321.91万円
三菱UFJ銀行:277万円
楽天グループ:61.25万円
※配当などは考慮していません
となっており、単一の銘柄投資している場合、大きく利益が出る場合もあれば、市場全体が上昇しているにも関わらず、大きく値を下げてしまっている場合もあり、分散投資によって銘柄固有のリスクを軽減できていることがわかります。
同様に、同一国内の株式市場にのみ投資すると、その国特有の経済状況(経済不況、政治的不安定等)に強く影響されます。例えば、アメリカの株式だけでなく、ヨーロッパ、アジア、新興国市場の株式にも分散投資を行うことにより、地域に特有のリスクを分散し、グローバルな視点で安定した成長を目指すことができます。地理的分散をすることで、特定の国の市場変動からの影響を軽減することができます。
日経平均株価と各国の株価指数の比較(期間:10年)
上記は過去10年間の日経平均株価と、SENSEX指数(インド)、S&P500指数(アメリカ)、ハンセン指数(香港)の株価指数推移の比較チャートです。こちらも同様に10年前に100万円の投資をしていたちすると、
日本株(日経平均株価):269.27万円
インド株(SENSEX):329.1万円
米国株(S&P500 ):272.97万円
ハンセン指数:84.51万円
となっております。為替の変動により実際の投資成績とは異なりますが、地域によって株価が異なった動きをすることがわかります。
また、全資産を一度に市場に投じるのではなく、複数の時期に分けて投資を行う「時間分散」も効果的です。市場の短期的な上下動に左右されず、平均的な取得価格を達成することが可能です。たとえば、一括で投資するのではなく、定期的な積立投資を行うことで、高値での購入リスクを避け、市場の波の影響を抑えて安定した資産形成を図ることができます。
時間分散の効果は下記の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
分散投資は、リスクを管理しながら、長期的に安定したリターンを追求するために有効です。投資家がリスク許容度に応じて、銘柄分散、地理的分散、時間分散を適切に組み合わせることで市場環境の影響を抑えた資産形成を行えます。
投資を始める際、特に初心者にとって、リスク管理と税効果を考慮することが非常に重要になってきます。前章で解説したように、NISA(少額投資非課税制度)は運用益が非課税になり、投資成果を最大化するのに役立つ制度です。特に、つみたてNISAはこれらの要素を効果的に活用できるため、投資初心者に特におすすめです。
つみたてNISAを利用する最大のメリットは、運用益が非課税となる点です。これにより、得られる利益全体を再投資に回すこともでき、複利効果を最大限に享受することが可能になります。つまり、税金の支払いを気にすることなく、純粋に投資成果を受け取ることができるわけです。
投資信託を用いることで、自動的に銘柄分散と地理的分散を行うことができることがあります。一つの投資信託が多数の銘柄に投資しているため、単一銘柄のリスクを大幅に軽減できます。また、国内外の様々な市場に投資するファンドを選べば、一国の経済情勢に左右されにくいポートフォリオを構築することが可能です。
さらに、NISAでは定期的に一定金額を投資することで、時間分散を自動的に行うことができます。これは、市場の変動に関わらず一定のリズムで投資を続けることができるため、市場の一時的な高値で購入してしまうリスクを減らすことができます。結果として、長期的な平均取得コストを抑えつつ、市場の上昇トレンドを利用して資産を成長させることができます。
積立投資のもう一つの大きなメリットは、市場の乱高下を気にせずに投資を続けることができる点です。積立投資を行うことで、どのタイミングで市場に入るかというタイミングリスクを軽減できます。これは、特に市場が大きく動いている時でも平常心を保ちながら投資を行うことを可能にし、長期的な視点で安定して資産を増やしていく戦略に最適です。これにより、初心者でも市場の波に翻弄されることなく、着実に投資を進めることが可能となります。
上記の点を踏まえ、投資初心者にとっては、NISAでつみたてをすることが投資を始めるのに非常に適した選択肢です。税効果の高いNISAを利用しながら、投資信託を通じて銘柄分散と地理的分散を行い、さらに時間分散のメリットも享受できるため、リスクを抑えつつ効率的に資産を形成していくことが可能です。これから投資を始める方は、まずはNISAつみたてから始めてみることをお勧めします。
シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(AFP)
大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)にて資産運用コンサルタントに従事。その後、みずほ銀行を経て、シグマ株式会社に入社。お客様のことを深く知って、お気持ちに寄り添ったアドバイスを心がける。お客様毎にライフプランに最適な資産運用を提案することはもちろんのこと、相続・遺言などにも強み。
【趣味】 神社仏閣巡り、甘味食べ歩き
【座右の銘】 日日是好日