今年に入り、オールカントリー(全世界株式)に投資するインデックスファンドが人気です。
一方で、「全世界株式だけの投資で大丈夫?他にいい投資先はないの?」といった声や
「インド株の投資信託を勧められた。新興国投資ってどうなの?」といったご相談をいただく機会が増えました。
今回は新興国株式について、今流行りの「オルカン」(全世界株式ファンド)などとも比較しながら解説いたします。
下図は全世界株式インデックスファンドに含まれる国の構成比のグラフです。
先進国が9割(内アメリカ6割)で新興国は1割程度ということがわかります。
「あれ?新興国の割合が思ったより少ないな」「アメリカの比率高いな」
と思われた方もいるでしょう。
GDPとは一定期間内に国内で新たに生み出された財やサービスの付加価値の総額で、一国の経済規模を示す目安のことを指します。
下記は2023年度の世界各国のGDPランキングです。
名目GDPランキング(2023年・IMF統計)
※ %は全体におけるシェア
1位 アメリカ 25.6%
2位 中国 16.99%
3位 ドイツ 4.30%
4位 日本 3.92%
5位 インド 3.76%
6位 イギリス 3.76%
7位 フランス 2.91%
8位 イタリア 2.09%
9位 ブラジル 2.07%
10位 カナダ 2.05%
先ほどの全世界株式インデックスファンドと比較してみましょう。1位アメリカは、GDPのシェアが25.6%に対して投資割合は62.3%となり、大きな隔たりがあることがわかります。
また、GDP全体に占める新興国の割合は約4割ですが、実際に投資している割合は約1割です。
このことから、全世界株式ファンドは、GDPの割合から乖離していることがわかります。
今後のGDPの伸び率は、新興国の方が高いとも予想されており、世界GDPに占める新興国の割合は増加していくものと思われます。
2050年にはE7(ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコ)の新興7カ国の世界GDPシェアにおけるシェアは約50%程度まで上昇する一方で、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ)のシェアは20%強にまで低下するとの予想データもあります。
下の図は世界のGDPと世界株式の推移を表したグラフです。ご覧の通り、世界のGDPの成長とともに世界株式(MSCIワールドインデックス)の時価総額も増加していることがわかります。長期的にみれば、GDPの拡大=株価の成長と言えそうです。
今後新興国のGDPが拡大していくとすれば、新興国株式に投資することを検討する価値はあるかもしれません。
下図は新興国株式インデックスファンドに含まれる国の構成比のグラフです
中国が一番多く(30%)、続いてインド、台湾、韓国などに幅広く投資しています。
emaxis slim 新興国株式ファンド 目論見書より抜粋
直近10年間の先進国株式と新興国株式の比較チャートをご覧ください(下図)。
過去10年では、先進国株式の方がパフォーマンスで大幅に優位に立っています。
これには様々な要因がありますが、ここ数年で見ると、先進国株式の組入1位であるアメリカ株が非常に好調だった一方、新興国株式の組入1位の中国株が不調だったことが影響していると考えられます。
このチャートを見て、
「今までパフォーマンス良かったんだから、今後も先進国株式の方が良さそう」
と考えて、先進国株式ファンドや米国株、「オルカン」を選択するケースもあるでしょう。
一方で、「まだ割安だし、将来の成長に期待して新興国株式も悪くなさそう。」
と、新興国株式への投資割合を増やす方もいらっしゃるのではないでしょうか。
投資アイディアの紹介
全世界株式(GDP比率)に投資
「全世界の株式にGDPの比率通りに投資したい!」
といった方には、GDP比率に連動する外国株式ファンドがあります。
ニッセイ世界株式ファンド(GDP型バスケット)月次レポートより抜粋
全世界株式インデックスファンドの新興国株式への投資割合が10%程度だったのに対し、こちらのファンドでは40%近く投資しており、GDP比率に近い割合となっています。
では、実際にGDPの比率通りに投資をした場合、今までのパフォーマンスはどうだったのでしょうか。
emaxis slim 全世界株式(オール・カントリー)とニッセイ世界株式ファンド(GDP型バスケット)とを比べたデータがありますので見てみましょう。
上記チャートは2020年6月からのデータです。GDPの比率通りに投資している方(青いチャート)は全世界株式インデックス(オレンジ色のチャート)に比べてパフォーマンスが悪かったことがわかります。
先進国株式と比べて新興国株式のパフォーマンスが現状劣後していることが、GDP全世界株式のパフォーマンスの悪化につながっていると考えられます。
今後GDPにおける新興国比率は高くなってくることが予想されています。それに伴い、この指数における新興国の割合は高くなっていくと考えられます。
今後は新興国株式のパフォーマンスがこの指数のカギを握ることになるでしょう。
新興国株式の中でもインド株だけに投資したい!
冒頭にも触れましたが、「インド株の投資信託を勧められた。新興国投資ってどうなの?」
という相談が最近増えた気がします。コロナショック以降のインド株の値動きの良さは目を見張るものがあり、これらのパフォーマンスの良さと高い経済成長率からお金が流入しているのでしょう。
下図はインド株式ファンドと新興国株式インデックスファンドを比較したものです(5年間)。新興国株式全体と比べ、パフォーマンスがここ数年は良いことがわかります。
為替リスクに要注意!
新興国は経済成長率が高いと同時にインフレ率も高い傾向にあります。高インフレになりすぎると通貨の価値は下がってしまい、為替で大きく損してしまう可能性があるので注意が必要です。
また、新興国通貨は米ドルなどと比較すると取引量が小さいため、変動幅(リスク)も大きいです。
例えばインド株式に投資をする場合、インドルピーの為替リスクがあります。下図は直近10年間のインドルピー/円のチャートです。2015年から2020年にかけて1.9円から1.4円までルピー安になっており、下落率は26%です。この為替によるマイナスと株式のマイナスが重なると、投資資産が半分になる可能性も十分にあることを頭に入れておくようにしましょう。
単一国に投資をする場合は、どの通貨建てかを必ずチェックするようにしましょう。
その他
もちろんインドだけでなく、インドネシアやベトナムなど成長の著しい国々に投資をすることも可能です。単一国だけでは不安を感じるのであれば、「東南アジア」など複数国に投資している投資信託もあります。10年先、20年先の未来を楽しみに、投資先の一部に組み入れるのも一案です。
まとめ
・全世界株式(オールカントリー)にも10%程度新興国株式が入っている。
・GDP比率に連動して投資できる全世界株式ファンドもあるが、ここ数年のパフォーマンスは全世界株式ファンドに比べて劣後している。
・新興国株式に投資する際は株式変動リスクのみでなく、為替リスクにも要注意!
あなたのゴールはいつですか?
ここ最近は先進国、特にアメリカ株が人気です。「まわりがみんな投資しているから」「今までパフォーマンスがよかったから今後もずっと良い」というバイアス(思い込み)にとらわれたり、思考停止したりしていないでしょうか。
ご自身が資産運用しているお金が必要になるのはいつでしょうか。10年後でしょうか?20年後でしょうか?それとももっと先でしょうか。
長期的な視野に立って考えてみる、もしくは俯瞰的に物事を見ることができれば、今流行りのものに飛びついてしまう本能や、「今が順調だから今後も順調だ」という単純な考え方
から脱却できるかもしれません。
定期的に自分が投資している資産クラス以外にも目を向けるようにし、大きな失敗につながらないようにしましょう。
とはいっても自分ひとりで自分の保有商品や投資環境をチェックすること、自分がバイアス(思い込み)にとらわれていることなどに気づくことは現実的に難しいかもしれません。
信頼できる相談相手を見つけ、時代に合った最適な資産運用を行いましょう。
シグマ株式会社 執行役員
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
九州大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事し、営業表彰などを受賞。今まで以上にお客様視点で物事を考え、一人でも多くのお客様の役に立ちたいとの考えからシグマ株式会社に入社。丁寧なヒアリングとライフプランからお客様毎の課題を明確にし、最適な資産運用提案を心がける。
【趣味】自己啓発、四季報の読破、お酒、トレーニング・ジョギング
【座右の銘】継続は力なり
【講師実績】 名古屋証券取引所IRエキスポ2017、2018