FIREとサイドFIREについて
最近のご相談で、「将来的にFIRE(Financial Independence, Retire Early)(経済的自立と早期リタイア)を考えており、どうすれば実現可能でしょうか?」というものがありました。詳しくお聞きしてみると、仕事を完全にやめるのではなく、仕事を続けながらFIREをする、いわゆる「サイドFIRE(サイドファイアー)」をご希望されていました。サイドFIREとは、資産運用をしつつ、副業などの労働収入と合わせて生活する方法をいいます。
今回は、FIREとサイドFIREの違いについて解説し、その注意点などをお伝えします。
FIREの根幹は、莫大な資産家でなくても、「年金収入と資産運用の運用益」のみで生活の目処が立った段階で、定年を待たずに早期リタイアを実現することにあります。若いうちに集中的に働いて老後資金を前倒しで準備し、完全な不労所得だけで生計を立てるスタイルです。
一方でサイドFIREとは、完全な不労所得だけで生活する「完全なFIRE」とは異なり、「資産運用益」と、「仕事や副業(サイドビジネス)による労働収入」を組み合わせて生活するスタイルです。生活費の半分程度を運用益で賄うため、FIREに比べて必要な資金が少なくて済みます。そのため、早期リタイアの形として、こちらのサイドFIREを検討している方も増えています。
メリットとして、サイドFIREの場合、働き方によっては社会保険に加入できることがあります。週2-3日ほど会社員として働くことを選んだ場合、雇用先によっては社会保険に加入できる場合があります。企業の健康保険に加入すると、保険料は「労使折半」、つまり会社が半分を負担します。国民健康保険に加入する場合と比較して自己負担額を抑えることが可能です。セミリタイア後の固定費を削減する上で、その労使折半の効果は非常に大きなものとなります。また、国民健康保険にはないメリットとして、「傷病手当金」や雇用保険からの「失業手当」などセミリタイア生活における予期せぬ事態への備えとなるでしょう。
デメリットとして、労働収入を前提としているため、万が一病気になったり、リストラにあってしまった場合、生活が苦しくなるリスクがあります。注意点として、少ない資金でサイドFIREをしようとして、資産運用において過度なリスクを取りすぎてしまうケースがあります。 万が一、市場の暴落などで資産が大きく目減りしてしまった場合、たとえ労働収入があったとしても、「想定よりも早い資産の枯渇」を招く恐れもあります。
次に「FIRE」と「サイドFIRE」の特徴を整理しました。

まず、どれくらいの貯蓄があれば「FIRE」が可能か考えてみたいと思います。総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」の結果を用いて計算しました。調査によると、2025年の消費支出の平均額は一世帯(夫婦二人)あたり314,001円※1となっています。これをもとに計算すると、314,001円(一世帯あたり)×12カ月×25(FIREの目安は基本生活費の25倍※2)=94,200,300円、つまりFIREするには、約9420万円が必要となり、約1億円の資金が必要であることが分かります。
※1 出典 総務省統計局 家計調査 「家計調査報告家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を参照
記載URL:https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2025.pdf
※2 FIRE(経済的自立と早期リタイア)の目安として「基本生活費(年間支出)の25倍」が挙げられる根拠は、米国で生まれた資産運用の法則「4%ルール」に由来します。「資産の4%で年間生活費をまかなう」という計算を逆算すると、以下のようになります。(計算式:100%÷4%=25 つまり、年間支出の25倍の投資元本があれば、その元本を4%で運用した場合、毎年生活費と同額の運用益(25倍×4%=1倍)が得られる計算です)
一方でサイドFIREの場合には労働収入も含めて計算するため、必要資金は少なくて済みます。家計支出の平均額を元に具体的にいくら貯蓄があれば実現可能か計算しました。
必要資産額の算出方法を計算式にすると、以下の通りです。
(1年間に必要な生活費 - 1年間の労働収入) × 25 = 必要資産額
先程の夫婦二人世帯の一般的な平均生活費31万4001円とし、仮に労働収入120万円(年間)だったとすると、いくら必要になるかを計算します。
計算式に入力し、算出した結果は以下の通りです。
{(31万4001円 × 12)- (10万円 × 12)} × 25 =6420万0300円
サイドFIREを達成する目安となる資産額は、6420万0300円という結果になりました。
先程のFIREするために必要な資金9420万円と比較すると少なくてすみそうですね。
また、6420万円の金融資産が仮になかったとしても、サイドFIREが可能かは具体的に計算してみることができます。可視化して検討するためには「ライフプランシミュレーション」がおすすめです。
サイドFIREは実現可能か、ライフプランシミュレーションを作成して検討しました。
モデルケース
50歳夫婦 子供は独立済
家計金融資産:4000万円
現在の給与収入:700万円
55歳で転職(サイド Fireを予定)
転職後(サイドFIRE後)
収入:給与収入 年240万円(65歳まで勤務)
支出:生活費 年240万円(年間2%のインフレ率を考慮)
年金収入: 年240万円(夫婦)として試算
上記モデルケース(前提条件)をもとに、金融資産シミュレーションを作成しました。下図のようなシミュレーション結果となりました。

金融資産シミュレーションによると、金融資産が5年後の55歳の時点で少なくとも金融資産が4000万円あり、そのうち仮に3000万円を約4%で資産運用をすることが出来れば、サイドFireは可能となり、概ね97歳まで資産が枯渇せず生活が可能となる見込みです。
参考として、サイドFIREでなく、FIREをした場合の金融資産シミュレーションも青実線で表記をしました※3同じ金融資産4000万円の開始でも資産の枯渇時期が大きく異なることが分かります。
(※3 前提条件として、上記モデル例において、給与収入を「無し」としており、それ以外変更はありません。また運用についても、同条件として計算しております)
ただし、前提とする生涯支出(生活費等)により大きく変わるため、生涯支出をいくつかのパターンで見積もった上で「いくらの資金を」「何%で運用ができれば」サイドFIREが可能か、また老後資産が枯渇しないかシミュレーションしてみる方法がお勧めです。
サイドFIREの注意点
ただし、サイドFIREにもいくつかの注意点があります。
まず、FIRE・サイドFIREは「資産運用」を前提としており、「年4%ルール」が前提であることが多いです。そうすると「年利4%の資産運用が維持できるか」が課題となります。「運用実績」はあくまで過去のものであり、資産運用が過去の実績の通り継続するとは限りません。
また、物価上昇が続いた場合にも想定の生活水準を維持することが難しくなります。そうなると、今までフルタイムで働いていた人にとっては、サイドFireでの時短勤務では収入面が物足りなくなると感じることもあるでしょう。また、最大の注意点としてこれはFireにも言えることですが、「予期せぬ出費や出来事」で資産状況が目減りしていくと途中で老後資産が足りなくなる可能性もでてきます。
FIRE・サイドFIREは自由な時間を手に入れられる一方で、ご紹介したような「注意点」があります。改めて、注意点やリスクをしっかり認識した上で、ご自身の計画に問題がないか考えてみてはいかがでしょうか?

シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(CFP)
大学卒業後、大和証券に入社。 個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。営業表彰などを受賞。より地域に根差し、顧客本位な仕事をしたいと感じシグマ株式会社に入社。ファイナンシャルプランナーの上級資格である(CFP)を保有し、ライフプランに基づいた資産形成や資産運用のアドバイスはもちろんのこと相続や不動産など資産全般の相談に強みを持っている。
【趣味】 フットサル
【座右の銘】 思考は現実化する