最近、「金(ゴールド)ってどうなの?」と聞かれることが増えています。
金価格が史上最高値を更新するなど、投資家の関心も高まっているのでしょう。
金価格の変動要因としては、主に3つが挙げられています。
このような背景から、金価格はこの数年で大きく値上がりし、投資先の1つとしておススメされるケースもあります。では、実際に金投資はどうなのでしょうか?
日本で一般的な金の値段は、主にドル建ての国際的な金価格(図1)を基に、ドル円為替相場を用いて円に換算された価格(図2)で表されます。具体的には、ドル建ての金価格とドル円相場(図3)を掛け算し、1トロイオンス(約31.1グラム)から1グラムに換算することで得られます。
例えば、ドル建ての金価格が1トロイオンスあたり3,000ドルで、ドル円相場が150円の場合、1グラムの金の円建て価格は約14,467円となります。「日本で直接金の現物を買いたい」のであれば、この価格をベースとなります。
ちなみに2025/3/24現在、1グラムあたり約16,000円ですので、1㎏買おうとすると1600万円!も必要です。
このような理由から、日本の金価格は円安・円高によって大きな影響を受けます。円安時には金価格は上昇し、円高時には下落する傾向にあります。
金価格は、2025年に入った今も過去最高値を更新しています。主な要因として、ドル建てでの金価格の上昇に加え、円安ドル高になったことが影響しています。
特にコロナが流行した2020年以降、世界的にインフレが進行した結果、金以外にも多くの現物資産の価格が上昇しています。これは逆に言うとお金(現金)の価値が下落していることも意味します。
「現金のままもっていても価値が目減りしてしまう」ことから、積極的に現物資産が買われた結果と言えそうです。
さて、金は今までどのような値動きをしてきたのでしょうか。直近20年を振り返ってみましょう。
2006年~2012年:金価格の上昇期(約3倍に)
2008年に起きたリーマン・ショックや2011年の欧州債務危機などにより、世界は不景気になり、株価も大幅に値下がりしていました。その対策として、各国は政策金利を引き下げて大規模な金融緩和政策を実施しました。世界経済の低迷や低金利により、株式や債券・預金などからお金が逃げ出し、金(ゴールド)が選考されたと考えられます。
「株式にすると損してしまうし、お金で持っていても金利がつかないし・・・」のようにイメージするとわかりやすいかもしれません。
2013年~2019年:金価格の下落期(約42%の下落)
その後、世界的な景気回復局面では世界株は堅調に値上がりした一方で、安全資産としての金はあまり買われず、米ドルベースでは5年程度継続的に値下がりしています。ちなみに前回の高値を回復するまでに約9年もかかっています。
「金で持っていても金利はつかないし、株式で運用した方がいいよね」といったイメージでしょうか。
2020年以降:金価格の上昇期(約1.5倍に)
コロナショックを受けて各国の中央銀行は大規模な金融緩和政策を実施しました。結果として金利が大幅に低下し、物価上昇が起こりやすい環境にありました。そこに、2022年からウクライナなどの地政学的なリスクやトランプ政権誕生などの不確実性なども重なり、金価格は上昇基調をたどっています。
また、近年では世界各国の中央銀行がドル依存からの脱却やリスク分散のために金を積極的に購入していることも金価格の上昇に拍車をかけているように思います。
このように、金はリスク回避局面や低金利・インフレ局面で買われやすい傾向にあります。また、世間では「安全資産」のイメージが強い金ですが、値動きだけを見れば決して「安全」とは言い切れません。あらためて図1のチャートをご覧ください。2011年の金先物価格は1800ドル程度でしたが、そこから2015年には1100ドル程度と、およそ40%下落しており、値動きは株式に劣らず大きなものとなっています。さらに図3の米ドル/円の為替リスクもあるため、価格変動リスクは相当程度に高いということは忘れないようにしましょう。
金投資にはいくつかの方法がありますが、主に
①金の現物を買うか、②金の価格に連動する証券を買うという方法があげられます。
①現物(金地金・コイン)を直接買う
貴金属店や楽天証券などのインターネット証券を通じて買うことができます。直接現物の金を買うことで物理的な所有感(金の輝きを見たり触ったりすることで得られる幸福感)を得られますが、売買手数料や取扱業者によっては保管手数料などもかかります。また、売却して利益が出た場合は譲渡所得となり、総合課税の対象として確定申告が必要となります。
なお、保有期間により課税金額が変わります。
・保有期間5年以内
短期譲渡所得=売却価格-(取得価格+譲渡費用)-特別控除50万円
・保有期間5年超
長期譲渡所得=1/2 × {売却価格-(取得価格+譲渡費用)-特別控除50万円}
利益に対して50万円までは非課税で、5年以上保有すれば課税所得が1/2になることがポイントですね。
②金の価格に連動する証券を買う
金価格に連動する投資信託やETFなどの「ファンドへの投資」をする方法です。売買手数料(商品によってはかからないものもある)や信託報酬がコストとしてかかります。売却益や配当(ファンドによっては配当がでるものも)は通常の証券売買と同じ源泉分離課税で、利益に対して20.315%かかります。特定口座・源泉徴収ありの証券口座で売買すれば、原則確定申告が不要なため便利です。また、NISA口座にて投資することも可能です。その際は、売却益や配当に対して非課税となります。
また、金は基本的にドル建てですが、ファンドに投資する場合「為替ヘッジあり」を選べば、為替リスクを逓減することができます。なお、その場合は為替ヘッジコスト(米国と日本の短期金利の差)がかかってくることに注意が必要です。
2つの投資方法を比較した場合、「最終的に現物の金を手に入れたい」という気持ちが強ければ、直接投資をした方がいいと思いますが、金の値上がり益やインフレヘッジ目的なのであれば、確定申告も不要で比較的手軽に投資できるファンドへの投資がおすすめです。
金は株式とは違った値動きをすることも多く、分散投資の観点からみると資産配分の一部に金を組み入れることは投資戦略として有効だと考えます。一方で金は株式や債券と違って、配当金や金利が出ません。よって金価格の上昇が投資をすることの恩恵になりますが、予測することが大変難しいため、組み入れるとしても資産の一部にとどめておく方がよいと考えます。
してほしくないのは、「これから株式の大暴落がくる」といった情報があった時に慌てて現在保有している株式などを全部売却して全部金に変えるといった極端な行動です。いつの時代も短期的にはマーケットは大きく変動しますが、それに心を揺さぶられないように心がけましょう。
最近ではバランス型投資信託の中で、状況に応じて株式と債券と金のバランスをマーケットに合わせて自動的に変えてくれる「可変型」と言われる投資信託もあります。「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」のバランスまで調整してくれるファンドも中にはあります。
「どのくらいの割合投資したいかわからない」ですとか、「高いしなかなか心理的に買い辛い」「マーケットが今後どう動くかわからない」といった方はこういったファンドを購入するのも一つの手です。
シグマ株式会社 執行役員
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
九州大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事し、営業表彰などを受賞。今まで以上にお客様視点で物事を考え、一人でも多くのお客様の役に立ちたいとの考えからシグマ株式会社に入社。丁寧なヒアリングとライフプランからお客様毎の課題を明確にし、最適な資産運用提案を心がける。
【趣味】自己啓発、四季報の読破、お酒、トレーニング・ジョギング
【座右の銘】継続は力なり
【講師実績】 名古屋証券取引所IRエキスポ2017、2018