目次
・はじめに
・円高が心配、だけど円安も家計に悪影響がある?
・経済力等のパワーバランスによる円安懸念
・通貨別シェアの観点から考察
・円安・円高時への備えはどうればいい?
・リスク分散のための外貨建て資産への投資
「こんな円安になって今さら米ドル建ての債券買って大丈夫?」や「円高になるのを待った方がいいですよね?」というご相談をいただくことがあるので、そもそも外貨へ投資することの意義を考察してみました。
当コラムでは外国通貨建ての債券の中でも米ドル建ての債券についてお話しさせていただきます。
また、外債に関する基礎知識は過去のコラムで説明しているので、そちらを御覧下さい。
1980年以降の米ドル/円のチャートを見て分かることは、直近40年間はおよそ80円~150円の間で往復してきた事実があり、まさに直近がその振幅の頂点の円安水準に到達している状況です。経験則的に今後その揺り戻しで大きく円高に振れることを警戒する方が多いのは当然だと思います。
では、円高に備えさえすればいいのでしょうか。これ以上円安が進行することの問題や備えは必要ないのでしょうか。
結論から申しますと、円安が進行することによって生活水準に悪影響を及ぼす恐れがあり、備える必要があると思います。
イメージしやすいようにiPhoneで考えてみましょう。例えば、米/ドル円=150円でiPhoneが1000ドルだと日本円で15万円ですが、その後円安になって米ドル/円=300円になれば円換算すると30万円にもなり、なかなかの高額商品となってしまいます。
ここ数年の円安が価格転嫁されつつあるガソリンや食品、生活用品が急激に値上がりしていることを実感している方も多いでしょう。
このように円安が進行した結果、それ以前に比べて生活資金がひっ迫してしまいます。
為替変動の要因として各国の経済力等のパワーバランスの変化も考慮に入れる必要があります。
パワーバランスに影響を与える要因の一つとして人口で比較してみたところ、2000年1月時点の人口を100とすると、インドは約134、米国は約120と成長している中で、現在の日本は約99と少子高齢化社会と人口減少が始まっており「強い円」を復権して、かつてのような円高水準を確保することは容易なことではないのかもしれません。
国際連合のデータを基にシグマ作成
各国の2000年1月を100として表示
通貨別シェアの観点から考察
BIS (国際決済銀行)の 2022 年世界外国為替市場調査によると、世界の外国為替取引額の通貨別シェアは米ドル44.3%、ユーロ15.3%、日本円8.4%、英ポンド6.5%と、日本円は3位のシェアではあるものの、1位米ドルは日本円の約5倍、2位のユーロは日本円の約2倍といったように世界外国為替取引額のシェアで比較すると米ドルの存在感が圧倒的です。普段日本円で生活しているので日本円を保有することの安心感はありますが、世界的な観点では日本円に比べると米ドルやユーロの方が信頼度が高いと考えられます。
円安の対策
円安への対策としては、外貨建て資産を保有することでリスクを回避できます。
米ドル円=100円でも、米ドル円=300円でも、1米ドルは1米ドルです。先ほどのiPhoneのケースで考えると米ドル/円=150円のタイミングで15万円支払って1000米ドル購入しておけば、その後に米ドル/円=300円といったような円安になったとしても事前に1000ドル保有していますので、円の支払いを追加することなく購入できます。
円高の対策
一方、円高になった時に恩恵を受ける資産は何でしょうか。
それは、円建て資産です。
円高になるということは外貨に対して円の価値が上昇していることになるので、
先ほどのiPhoneの例の逆で、海外の資源や製品をより少ない円で購入できる、ということになるからです。当然預金も円建て資産に含まれます。
そう考えると、無意識的にでも円高に対する備えは十分に出来ている人が多いのではないでしょうか。
リスク分散のための外貨建て資産への投資
いずれにせよ、将来円高か円安かどちらに動くのかを予測することは簡単ではありません。
円高への備えが十分なのであれば、逆に外国債券等を含め、外貨建て資産を一部保有して円安へも備えるなどして、どちらにも備えておくことで致命的な状況を回避できるようにすることも有効かもしれません。
執筆者 山本 洋平
シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
宅地建物取引士
大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。より一層お客様目線のコンサルティングがしたいと考え、シグマ株式会社へ入社。
お客様の真の相談相手になりたいと考え、親身なコンサルティングを心がける。お客様の現状と将来目標をしっかりと分析し、目標を達成するためのプランを立案。金融商品も証券アナリストの目線から厳選。
【趣味】ワイン、ゴルフ、社交ダンス、YouTubeで猫とカワウソの動画を見ること
【講師実績】名古屋証券取引所IRエキスポ2019、資産運用基礎講座