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資産運用の前に知っておきたい「リスク許容度」とは

2024年12月15日


資産運用で最も大事なことは「資産配分」とされています。

 

そして適切な「資産配分」を決定する際によく出てくるフレーズがこれです。

「ご自身のリスク許容度に合った資産配分にしましょう」

 

ここで一つの疑問です。「さて、リスク許容度とはなに?そして自分のリスク許容度とは?」

おそらく一度は耳にしたことのある言葉と思いますが、深く考えたことはないかもしれません。

今回はリスク許容度について掘り下げてみたいと思います。


〇目次

・リスク許容度とは

・自分のリスク許容度を知ろう

・自分のリスク許容度に合った資産配分を知ろう

・自分のリスク許容度を知ることが投資継続のカギ

 

リスク許容度とは

リスク許容度とは、「どの程度のマイナス幅までなら受け入れることができるか」を示した度合いのことです。

リスク許容度を測る要素はいろいろありますが、大きく分けて次の5つになります。

①年齢
②収入
③保有資産
④投資経験
⑤性格

順にみていきましょう。

①年齢

一般的には若い人ほど、リスク許容度は高くなります。基本的に若い人は労働収入が大きく(人的資本が大きい)、運用期間を長く取れるので大きな損失に耐えることがより可能とされます。

②収入

収入が多い人ほど、リスク許容度は高くなりえます。仮に大きな損失がでても、十分な収入があれば生活への支障も少なく、耐えることが可能と考えられるからです。

③保有資産

保有資産が多くなるほどリスク許容度は高くなる傾向にあります。収入が多いケースと同様に、大きな損失が出ても、生活への支障は少ないためです。

④投資経験

資産運用の経験が豊富な人ほど、値動きの大きさに慣れていたり、過去の下落局面を経ることでリスク許容度が高まることがあります。自分が保有している金融資産の価値が下がっても、過去の経験や正しい金融知識があれば、冷静な心で対処しやすいからです。

⑤性格

損失が発生したときの感じ方は人それぞれです。慎重な性格の方はリスク許容度が低く、積極的な性格の方はリスク許容度が高い傾向にあります。仮に若くて収入や保有金融資産が多くても、性格がかなり慎重で損失に関する感度が高い人であれば結果としてリスク許容度は低くなることが多く、「性格」の要素がリスク許容度に与える影響は大きいと言えます。

このように、リスク許容度を測るうえでも様々な要素があることがおわかりいただけたと思います。

今回のコラムでは⑤性格の要素についてもう少し深堀していきたいと思います。

自分のリスク許容度を知ろう

自分の心が耐えることができる(受け入れることができる)損失額はいくらでしょうか。

まずは以下の4つの質問を考えてみてください。

 

質問1.もし投資した商品が40%下落したら耐えることができますか。

(毎日どきどきして精神的に落ち着かなくなったり、夜も眠れなくなるなど)

 

質問2.もし投資した100万円が40万円下落した場合、耐えることができますか。

 

質問3.もし投資した1000万円が400万円下落した場合、耐えることができますか。

 

質問4.もし投資した2000万円が800万円下落した場合、耐えることができますか。

 

いかがでしたでしょうか。質問2~質問4は質問1と同じ内容を具体的な金額にしたものになるのですが、金額が増えてくるに従い、「耐えれない」と答えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

質問2は、試しに余裕資金の100万円を使って投資信託を買ってみたといったイメージです。40万円の下落が起きたときに「そこまで生活に影響はないから放っておこう」と感じる人もいれば、「もう無理、全部解約したい」と思ってしまう人もいるかもしれません。

質問3は、退職金の半分くらい、もしくは今までコツコツと長年貯めてきた普通預金を使って投資するイメージでしょうか。40万円だったら耐えることができても、400万円の下落には耐えられない人もでてきそうですね。

質問4は退職金のほとんどを投資したイメージで考えてみましょう。老後資金としても大事な虎の子の退職金が800万円もマイナスになった時、耐えられそうですか。夜ぐっすり眠れますか。そうでない場合は、どの程度のマイナス幅までなら、安心して持ち続けられるかを考えてみることも大切かもしれません。

今から資産運用を始めようとされている方は、「まずは少額から」と考えられる方もいるかもしれません。その場合においても、最終的に投資しようと考えている金額を想定して、「どのくらいの金額の損失なら耐えることができるか」を考えて自分のリスク許容度を知ることが大切です。

例えば、最終的な投資金額が「3000万円」であれば、いくらまでの目減りなら耐えるかを考えます。「600万円くらいまでならなんとか・・・」ということであれば、リスク許容度は20%程度と想定されます。

それでは「最大損失額が20%程度になるような資産配分」はどうやって決めたらよいのでしょうか。知りたい方はもう少しだけ続きをお読みください。

 

自分のリスク許容度に合った資産配分を知ろう

先ほどの4つの質問で出できた40%下落という数字は「国内株式」もしくは「外国株式」に全額投資した際に起こりうるものです。

下表は各資産の推計リスク・期待リターンを表したものです。

ここでいう推計リスクとは各資産の値動きの激しさ(リスク)を表す指標です。変動率の標準偏差(年率)を表します。

仮に、リスクが20%の場合、次のような意味となります。
期待リターンに対して約68%の確率でリターンが上下20%上昇/下落する。
期待リターンに対して約95%の確率でリターンが上下40%上昇/下落する。

少しわかりにくいですね。具体的に国内株式(推計リスク23.14%・期待リターン5.6%)を例にしてみます。

先進国株式に投資すると、1年後のリターンは、

約68%の確率で-17.4%~+28.6%の範囲に収まり、

約95%の確率で-40.4%~+51.6%の範囲に収まると推計される

ことを意味します。

 

つまり、リターンが40%近く上振れすることもあれば、反対に40%程度下振れすることもあるということになりますね。

ちなみに、推計リスク×2は最大想定損失率とも呼ばれます。

大きく資産を増やせる可能性がある一方で、多くの損失が発生する可能性も十分にあるということです。

これらの「リスク」は株式資産だけでなく、よりリスクの低い「債券」などの資産クラスに分散投資することでその値を小さくすることが可能です。

先ほどの質問で、「40%の下落に耐えることができない」と感じた人は、株式資産などのハイリスク・ハイリターン商品の割合を減らし、債券などのローリスク・ローリターン商品の割合を増やすと良いでしょう。

ここからはこのリスク・リターン表のデータを参考に、リスク許容度ごとのポートフォリオ(資産配分)の例を見ていきましょう。

 

ポートフォリオ例

積極型のポートフォリオ

リスク許容度を20%~25%程度(40%~50%の下落に耐えれる方)と想定します。

先ほどの表の数字を使うと外国株式100%の場合は、推計リスクが24.85%であり、期待リターン7.2%です。国内株式100%の場合は、推計リスク23.14%で期待リターン5.6%となります。

 

バランス型ポートフォリオ

リスク許容度10%~15%(20%~30%の下落に耐えれる方)と想定します。

外国株式、国内株式、外国債券、国内債券をそれぞれ25%ずつ配分すると、推計リスク12.32%、期待リターン4.0%です。※出典:「2023年度業務概況書」(GPIF)(https://www.gpif.go.jp/operation/65829801gpif/2023_4Q_0705_jp.pdf)

こちらのポートフォリオは「最大損失率が20%程度と想定される資産配分」と言い換えてもいいですね。

 

金融機関のリスク許容度測定ツールを利用する

多くの証券会社や金融機関が無料でリスク許容度テストを提供しています。

いくつかのリスク許容度テストを利用してご自身のリスク許容度を測るといいかもしれません。また、ご自身のリスク許容度に合ったポートフォリオを出してくれるところがほとんどですのでそれらを参考にご自身の資産配分を考えてみてもいいでしょう。

シミュレーションを使って将来どのような値動きになるか事前に把握する

実際どのような値動きがあって、運用金額はどのように推移するのかをシミュレーションしてくれるサイトもあります。ご興味ある方は具体的なリスク値・リターン値を入力してシミュレーションしてみましょう。
https://www.am.mufg.jp/tool/simulation_ikkatsu.html

 

自分のリスク許容度を知ることが投資継続のカギ

自分のリスク許容度を超えて運用していると、もしも金融ショックなど大幅な下落が発生した際に、ショックが大きくて夜も眠れなくなり、「もう投資なんてコリゴリだ」と投資をやめてしまうかもしれません。

運用を始めた当初は「下がっても持ち続ければいいでしょ」と考えていても、実際に損失が大きくなってくると「もっと下がるのでは・・・」と不安になって売却したくなるものです。

最近だと足元の好調なパフォーマンスを背景に、S&P500やオールカントリーが人気のようですが、外国株式のリスクは25%程度ですので、40%~50%程度下落する可能性もあると再認識する必要があります。ご自身のリスク許容度はいかがでしょうか。

一方でリスク許容度を大きく下回る運用もお薦めできません。安全資産の割合が多すぎると、より高い収益を得る機会を失ってしまうだけでなく、インフレが進行すれば資産の目減りする恐れもあるからです。

自分のリスク許容度をきちんと把握し、それに合った資産配分で運用することが重要です。

そうはいってもご自身のリスク許容度を自分で把握するのはなかなか難しいと思います。ご自身のリスク許容度についてしっかりと把握されたい方はぜひ一度ご相談にお越しください。

 

 


執筆者  藤原 達彦

シグマ株式会社 執行役員
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

九州大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事し、営業表彰などを受賞。今まで以上にお客様視点で物事を考え、一人でも多くのお客様の役に立ちたいとの考えからシグマ株式会社に入社。丁寧なヒアリングとライフプランからお客様毎の課題を明確にし、最適な資産運用提案を心がける。

【趣味】自己啓発、四季報の読破、お酒、トレーニング・ジョギング

【座右の銘】継続は力なり

【講師実績】 名古屋証券取引所IRエキスポ2017、2018