老後をどのように考えられていますか?
人生100年時代といわれる昨今、仕事を引退してからも人生はずいぶんと長くなった気がします。そのため、以前に増して老後をどのように過ごすかという悩みも聞かれるようになりました。皆様はどのように老後を過ごしたいですか?
最初はぼんやりとでもいいと思います。本当に過ごし方は多種多様で、人によって、「ずっと仕事を続けたい」とか、「仕事は継続するけど、もう少し余暇も楽しみたい」など考え方は様々でしょう。また、仕事から完全に引退して、「老後を思いきり楽しみたい」という方も多いかと思います。老後の過ごし方自体に正解はなく、重要なのは本人がどのように過ごしたいかだと思います。
ただ、ここで一つポイントなのが、どうしても未来のことを考えるときに、不安が先に立ってしまいがちです。もちろん、不測の事態を考えておくことは大切なことだと思うのですが、ご自身がワクワクする気持ちや、楽しいと思う気持ちを軸に前向きに未来を描いてみてはいかがでしょうか。
本コラムでは、リタイア後の生活を考えるうえで、ライフプランの立て方について事例を交えて解説していきます。
老後を過ごすうえで「健康」、「資産」、「趣味」の3つがバランスよくあると、より過ごしやすくなるかと思います。なので、この3つを基に老後を考えていきます。
皆さんは何歳まで自分が生きられるか考えたことはありますか?
もちろん答えはありません。自分の寿命を予想するのは非常に難しいので、寿命に関するデータを基に話を進めていこうと思います。
その際に、参考とするのが日本人の平均寿命です。男性が81.09歳で女性が87.14歳というデータがあります。
このデータを基に、男性は81歳、女性は87歳を人生の終着点の目安としてもよいかもしれません。
※平均寿命とは0歳における平均余命のこと
※令和5年データ
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/index.html)
まずは「健康」から
豊かな老後生活を送るためには、長生きするだけでなく、健康を維持することも大切です。
ただし、自分がいつまで元気でいられるかを的確に当てることは寿命と同様に難しいとことでもあります。
この場合にも参考とするデータとして、平均健康寿命というものがあります。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを意味します。一言でいうと、元気で日常が過ごせる期間です。日本人の平均健康寿命は男性が72.68歳(平均寿命に対して-8.41歳)で、女性が75.38歳(平均寿命に対して-11.76歳)とされています。この年齢までをやりたいことを実行できる目安としてもよいかもしれません。
どれぐらいの資産が必要?
おおよそですが人生を楽しむ期間を決めたので、次は資産について検討してみましょう。資産の寿命という言葉を聞いたことがあるかもしれません。資産の寿命とは老後の生活費を補うために、形成した資産が尽きるまでの期間のことを指します。なので、この資産が尽きると公的年金に頼ることになります。老後の過ごした方によって、資産の寿命は異なってきますので、ご自身の生活水準に合わせて資産の寿命も延ばしていく必要があります。
老後にやりたいことは?
どんな趣味をしたいですか?いざ考えると悩みますね。
ひとことで趣味と言っても沢山ありそうです。
代表的なものですと、旅行、カメラ、ゴルフ、山登り、料理、読書、映画鑑賞、スポーツ、囲碁・将棋、園芸など、枚挙にいとまがありません。今回の事例では、老後にしてみたいことで上位の「海外旅行」について取り上げてみます。
気になる費用は?
リタイア後に海外旅行をするとしたら、皆さんはどこの国に行ってみたいですか?
韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール、ベトナム、ハワイ、オーストラリアなど魅力的な国が沢山あって迷ってしまいます。
最近のトレンドとしては距離と費用、そして時差の観点からアジア方面が人気みたいです。
ただ、気になるのは費用の方ですよね。では、実際に費用がどれぐらいかかるかみてみましょう。
費用(フライト費、宿泊費、交通費、観光費、保険費、Wi-Fi費込)は、渡航時期、旅行会社、航空会社、滞在日数等により費用は変動しますので、一つの目安として見て頂きたいのですが、以下のようになっています。
※一人あたりの費用
韓国:15万円~16万円
台湾:9万円~13万円
香港:15万円~17万円
ハワイ:39万円~52万円
シンガポール:19万円~21万円
タイ:16万円~18万円
アメリカ:100万円~130万円
イタリア:60万円~84万円フランス:37万円~48万円ヨーロッパと北米あたりですと一人当たり平均して100万円以上となります。
海外旅行の費用は、渡航時期や、選ぶ旅行会社、また航空会社、滞在日数によって変動しますが、これら以外にも費用に影響するものがありまして、それが「物価」と「為替」です。
国によりますが、日本に比べて海外の物価は高く、物価の上昇率も高い傾向にあります。
IMF(国際通貨基金)の見通しによると、世界の物価上昇率は2025年に4.2%、2026年に3.5%と和らぐ傾向であるものの日本よりもはるかに速いペースで上昇しています。
出典:国際通貨基金ホームページ(https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2025/01/17/world-economic-outlook-update-january-2025)
また、為替予想をするのは難しいのですが、現時点では日本円はどの通貨に対しても円安傾向にあり、旅行費用も円安に連動して増えていく傾向にあります。
年々増加する費用
海外旅行の費用は国によって変わりますが、海外旅行の費用一人当たり15万円~100万円、ご夫婦で30万円~200万円ほど掛かります。これらの費用は年々増加傾向にあります。
楽しい老後の為に、費用の問題を解決する必要があります。
事例を基に考えると
このように趣味や海外旅行など適度に楽しみながら老後生活を送りたい。でも、やっぱり気になるのはお金のことですね。より具体的にイメージするために、次のモデルケースで考えてみましょう。
夫婦ともに65歳で、収入は公的年金のみで月25万円。基本生活費や住宅関連費などで毎月30万円ほどかかり、毎月の取り崩し額は5万円です。預貯金は退職金を含めて4000万円あります。
ご夫婦で楽しみにしている海外旅行を年に1回、150万円程度とし、ともに元気で旅行できそうな75歳までの10年間を予定しました。
「モデルケース」
夫:65歳
妻:65歳
収入:年金300万円(夫婦合計)
生活費等:毎月30万円
預貯金:4000万円
趣味:海外旅行を年1回150万円程度 75歳までの10年間
これらを基に将来シミュレーションをしたところ(図1)、概ね100歳くらいまでは資金が枯渇しない結果となりました。ただ、87歳ごろには貯蓄が1000万円を割り込んでおり、将来の病気や介護のことを考えるとやや不安に感じられるかもしれません。
また、物価上昇率を加味すると状況も大きく変わりそうです。仮に物価上昇率を年2%とすると、85歳ごろには資金が枯渇してしまうと試算されました。(図2)
※年金の上昇率を年1%とする
このように具体的にシミュレーションをしてみると、いろいろと課題が見えてくることがあります。プランを考える際には、一方向からではなく、多面的に検討することも必要といえます。
このケースの解決策としては、①毎月の生活費を抑える、②楽しみの旅行費を減らすor回数を減らす、③資産運用によって資産の目減りを抑える、など主に3つが考えられます。
例えば、③の資産運用を検討するとして、仮に預貯金を年4%で運用することができたらどうでしょうか。インフレ率をやや上回る程度の運用ですが、100歳ごろまで資金寿命を延ばすことができています。(図3)
資産運用を検討する際にも事前のシミュレーションは欠かせません。目標リターンが明確になることで、商品選びがスムーズになりますし、一喜一憂をすることも少なくなるでしょう。
リタイア後のライフプランの立て方
リタイア後のプランの立て方としては、まず具体的にリタイア後はどんなことをして過ごしたいかを考えます。次に現状を把握します。そして、現状と目標の間にどれぐらいギャップがあるかを確認します。
その際にライフプランシミュレーションをされることをお勧めします。
ライフプランシミュレーションをすることで、現状と目標を明確に把握することができ、
どれぐらいのギャップがあるかを具体的に認識することができます。
例えば、「65歳までに○○円貯める必要がある。」ですとか、十分に余裕があれば、「早期リタイアも検討しようかな。」など、選択肢が広がる可能性もあります。
そして、老後の資産運用を検討する際にも、どの程度リターンが必要かなど、資産運用の方向性を明確にすることにもなります。
老後をいっそう楽しいものにするためにも、健康寿命、資産の寿命、趣味のバランスを考えながらプランニングをしてみてはいかがでしょうか。
シグマ株式会社
3級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学卒業後、三縁証券、岩井コスモ証券、保険代理店などで10年以上勤務。お客様から信頼をいただき、営業面で優れた実績を上げてきました。投資と保険の実務経験を生かしたアドバイスに強み。より高い知識やサービスを志してシグマに入社。
お客様のご希望の将来をしっかりとヒアリングし、適切なライフプランニング・資産運用計画の作成を心がけている。
【趣味】読書、美術館めぐり、旅行
【座右の銘】習慣は第二の天性なり