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株式を相続・売却したときの税金ガイド。確定申告の要否と節税ポイント

2026年7月5日


突然の株式相続  税金や手続きに戸惑っていませんか?

親族がお亡くなりになり、悲しみに暮れる間もなくやってくるのがさまざまな相続の手続きです。預貯金や不動産だけでなく、「親が証券会社に口座を持っており、株式を保有していた」というケースは決して珍しくありません。昨今では、将来の資産形成のために生前から資産運用を行っている方が増えているため、株式や投資信託が相続財産に含まれる事例が増加の傾向にあります。

「親が持っていた株式を相続することになったけれど、何から手をつければいいのかわからない」

「株式を売却したら、多額の税金がかかるのではないか」

「そもそも、自分は確定申告をする必要があるのか」

こうしたお金や税金に対する不安を抱える方は非常に多くいらっしゃいます。株式の相続手続きは、預貯金の解約などとは異なり、証券口座の開設や名義変更(移管)といった独自のステップが必要になります。さらに、売却時の税金計算や申告の方法によっては、最終的に手元に残る金額が大きく変わる傾向があります。

本記事では、株式を相続し、その後に売却を検討している方に向けて、税金の仕組みや確定申告の要否、そして知っておきたい節税のポイントを、客観的な視点からわかりやすく解説します。

モデルケース:50代会社員が親の株式を相続した場合

具体的なイメージを持つために、以下のモデルケースを設定して解説を進めます。

【前提条件】

・相続人:50代の会社員(給与所得者)

・被相続人:亡くなった父親

・相続財産:実家、預貯金、そして証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で保有していた国内の個別株式(現在の評価額1,000万円)

・状況:父親の遺産分割協議が円滑に終わり、株式はすべてこの50代の相続人が引き継ぐことになった。相続税の申告と納税は既に終えている。今後の教育資金や自身の老後資金の足しにするため、相続した株式を売却して現金化し、運用を見直すことを検討している。

この状況において、相続人が直面するステップは大きく分けて「株式を自分の口座に移す」「株式を売却する」「必要に応じて確定申告をする」の3つです。それぞれの段階でどのような手続きや税務上の判断が必要になるのか、順を追って見ていきましょう。

株式を相続・売却する際の具体的な解決策と税金ルール

1. 株式を相続するための第一歩:口座開設と移管手続き

まず大前提として、亡くなった方の証券口座のまま株式を売却することはできません。売却するためには、株式を相続人であるご自身の名義に変更する必要があります。

もし、ご自身が父親と同じ証券会社に口座を持っていない場合は、新たに口座を開設しなければなりません。口座開設後、亡くなった方の口座からご自身の口座へ株式を移動させる「移管(いかん)」の手続きを行います。証券会社によって異なりますが、戸籍謄本や遺産分割協議書などの必要書類を提出してから移管が完了するまで、数週間から1ヶ月程度の期間がかかる傾向があります。

なお、この相続によって株式を受け継いだ時点では、「相続税」の対象にはなりますが、所得税や住民税は発生しません。

2. 株式を売却した際にかかる税金の仕組み(譲渡所得)

相続した株式をご自身の口座に移した後、それを市場で売却して利益(譲渡益)が出た場合には、「所得税」と「住民税」がかかります。税率は合計で20.315%(所得税15.315%、住民税5%、復興特別所得税を含む)です。

ここで非常に重要となるのが、「いくらで購入したものとして利益を計算するのか」という「取得費(購入代金)」の扱いです。

相続で取得した株式は、原則として亡くなった父親が「いつ」「いくらで」購入したかという取得価額と取得時期をそのまま引き継ぎます。これを税務上、「取得費の引き継ぎ」と呼びます。

例えば、父親が昔300万円で購入した株式が、現在1,000万円に値上がりしていたとします。この株式を1,000万円で売却した場合、ご自身が実質的にお金を出していなくても、「1,000万円 − 300万円 = 700万円」が利益として計算され、この700万円に対して20.315%の税金(約142万円)がかかることになります。

【親がNISA口座で保有していた株式の取り扱い】

最近では、親がNISA口座を利用して株式を保有していたケースも増えています。ここで注意が必要なのは、NISAの「非課税のメリット」はそのまま相続人に引き継がれないという点です。

亡くなった方がNISA口座で保有していた株式は、相続人の口座に移管される際、非課税口座(NISA口座)ではなく、課税口座(特定口座や一般口座)に振り替えられます。このときの取得費は、親が購入した金額ではなく、「亡くなった日の時価(最終価格など)」となります。つまり、親が購入してから亡くなるまでに生じた利益に対しては税金がかかりませんが、相続人が引き継いだ後の値上がり分に対しては、売却時に税金がかかる仕組みとなっています。NISA口座からの移管は手続きが複雑に感じられることもあるため、あらかじめ証券会社に手順を確認しておくことが大切です。

3. 確定申告の要否は「口座の種類」で決まる

売却後の税金計算を終えた後、確定申告が必要かどうかは、相続人が株式を預けている(移管した)口座の種類によって異なります。

・【特定口座(源泉徴収あり)】を利用している場合

原則として確定申告は不要です。証券会社が1年間の利益と損失を計算し、売却代金から自動的に税金を差し引いて代わりに納付してくれます。会社員の方で、日中の業務が忙しく税金計算に手間をかけたくない場合は、この口座を利用することが一般的な選択肢となります。

・【特定口座(源泉徴収なし)】や【一般口座】を利用している場合

証券会社から送られてくる年間取引報告書などを基に、ご自身で年間の利益を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行って税金を納める必要があります。

4. 知っておくべき節税ポイント:【取得費加算の特例】

多額の相続税を納付した方が株式を売却する場合、一定要件を満たすと【取得費加算の特例】という制度を利用できる場合があります。これは相続対策の選択肢として非常に有効な制度です。

納めた相続税のうち、売却した株式に対応する部分の金額を、株式の取得費(購入代金)に上乗せして計算できるという特例です。

【具体例で見る節税効果】

前述の例(売却代金1,000万円、父親の購入代金300万円)で、もしこの株式にかかった相続税が100万円だったとします。※ここの税額計算は複雑なため、仮に100万円としています。

特例を使わない場合の利益は「1,000万円 − 300万円 = 700万円」です。

特例を使った場合、取得費に相続税100万円を上乗せできるため、利益は「1,000万円 −(300万円 + 100万円)= 600万円」となります。

利益が100万円圧縮されるため、税率20.315%を掛けると、約20万円の節税効果が期待できます。

【取得費加算の特例の主な要件】

・相続や遺贈により財産を取得した者であること

・その財産を取得した人に相続税が課税されていること

・その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していること(実質的に、亡くなってから3年10ヶ月以内)

最大の注意点は、この【取得費加算の特例】を適用するためには、たとえ「特定口座(源泉徴収あり)」で売却して税金が自動的に天引きされていたとしても、ご自身で別途確定申告を行う必要があるという点です。確定申告を行うことで、納めすぎた税金の還付を受ける流れとなります。

5. 売却後のポートフォリオ再構築:「3つのポケット」で考える

親から受け継いだ国内の個別株式を売却して手にした資金を、これからどのように管理・運用していくべきでしょうか。ここで役立つのが、資金を目的別に分ける「3つのポケット」という考え方です。

【1つ目のポケット:日常資金(流動性資金)】

生活費の半年〜1年分程度や、急な病気やケガに備えるお金です。この資金は、価格が変動すると困るため、すぐに引き出せる「普通預金」などで確保します。

【2つ目のポケット:中期資金(使用予定資金)】

数年以内(おおむね3〜5年以内)に使い道が決まっているお金です。例えば、お子様の大学の入学金や学費、車の買い替え、ご自宅の修繕費用などです。この資金も大きく目減りすると計画が狂ってしまうため、運用したとしても「債券」や「低リスクな投資信託」など、元本が変動しにくい値動きの穏やかな商品で管理する選択肢が適しています。

【3つ目のポケット:長期資金(将来に向けた老後資金など)】

当面(10年以上)使う予定のない資金です。老後の豊かな生活のための準備金などが該当します。この資金については、長期的なインフレ(物価上昇)による実質的な価値の目減りを防ぐためにも、資産運用に振り向けることが有効な対策の選択肢となります。

「3つ目のポケット」で運用を検討する場合、国内の特定の個別株式に集中投資するよりも、リスクを分散しつつ世界経済の成長を取り入れるポートフォリオの構築が望ましい傾向があります。

・価格変動をある程度抑えたい部分

「先進国債券型投資信託(為替ヘッジあり)」など、株式とは異なる値動きをする傾向がある債券を組み入れることで、資産全体のクッション役を持たせる選択肢。

・長期的な成長を期待する部分

「海外株式型投資信託(複数の国と地域に投資するタイプ)」など、広く世界に分散された資産を組み入れる選択肢。

これらを、非課税制度であるNISAなどを活用しながら、時間をかけて定額で投資していく(積立投資による時間分散)ことで、よりリスクを抑えた資産形成が期待できます。

リスク管理と注意点の解説

株式の相続および売却、そしてその後の運用には、あらかじめ把握しておくべきいくつかの注意点やリスクが存在します。

・保有し続けることのリスク

親が大切に保有していた思い入れのある銘柄であっても、その企業が将来にわたって成長し続けるとは限りません。一つの企業に集中投資している状態は、その企業の業績悪化などによって資産価値が大きく下落するリスクを伴います。ご自身の許容できるリスクの範囲を超えている場合は、冷静に売却し、分散を図ることがリスク管理の基本となります。

・取得費が不明な場合のリスク(5%ルール)

親が何十年も前に購入した株式の場合、当時の購入代金がわかる書類が見つからないケースが多々あります。取得費が不明な場合、原則として「売却代金の5%」を取得費として計算するルールとなっています。

例えば1,000万円で売却した場合、取得費は50万円となり、残りの950万円が利益とみなされます。この場合、想定以上に多額の税負担が発生する傾向があります。手遅れになる前に、親が取引していた証券会社に過去の取引履歴を照会したり、銀行の出金履歴を確認したりするなど、できる限りの調査を行うことが重要です。

・確定申告を行うことによる「他の制度への影響リスク」

【取得費加算の特例】などを受けるために確定申告を行った結果、株式の譲渡益が「合計所得金額」に加算されます。これにより、会社員の妻(パート勤務など)が親から株式を相続して申告した場合、配偶者控除や配偶者特別控除の対象から外れてしまう、あるいは国民健康保険の扶養から外れてしまうなどの影響が出る場合があります。

税金を取り戻すための確定申告が、かえって世帯全体での社会保険料や税金の負担を増やしてしまうケースもあるため、申告を実行する前には、世帯全体での慎重なシミュレーションが必要です。

また、資産運用においては、過去のデータや税制が将来にわたって保証されるものではありません。経済状況や市場環境の変化により、想定したリターンを下回る、あるいは損失を被る可能性があることを常に念頭に置いておく必要があります。

まとめ:複雑な相続・税金・運用の悩みは専門家へ

親から受け継いだ大切な資産だからこそ、どう取り扱うべきか迷うのは当然のことです。

「そのまま保有し続けるべきか」「売却して税金を払うべきか」「売却後の資金はどう管理すべきか」。これらの問いに対する適切な答えは、ご自身の年齢、家族構成、今後のライフプラン、そして保有する資産全体の状況によって一人ひとり異なります。

特に、税金のルールは非常に複雑であり、【取得費加算の特例】のような期限のある制度を見落としてしまうと、経済的な不利益を被る可能性があります。また、売却後の資金を適切に管理・運用していくためには、「3つのポケット」に代表されるような、客観的な視点に基づいた資産整理とポートフォリオの構築が不可欠です。

「自分の場合は確定申告をした方が有利なのか、シミュレーションしてみたい」

「相続した資産を含めて、これからの老後資金の計画を根本的に見直したい」

「個別株式に偏った資産を、自分に合ったリスクでどのように分散させればよいかアドバイスが欲しい」

少しでも迷いを感じられた場合は、インターネットや書籍の情報だけで判断せず、お一人で抱え込む必要もありません。税金や資産運用に関する幅広い知識を持つFPへの個別相談をご検討ください。FP法人シグマでは、必要に応じて税理士、司法書士などニーズに合った専門家の紹介も行っています。

現状の整理から将来に向けたプランニングまで、あなたの状況に寄り添った解決策の選択肢を一緒に考えていきましょう。

シグマコラム編集チーム

FP法人シグマは、名古屋に拠点を置き、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として、
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