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評価益が出ている資産の対処法

2025年3月10日


1.今、評価益が出ている資産を持っていませんか?

2024年は、世界的に株価が上昇し、NISAをきっかけに投資を始めた人にも順調な一年だったのではないでしょうか。2024年1月4日を起点日として、日経平均株価は昨年末比19%上昇、米国株(S&P500指数)も25%と大きく上昇しました。為替も8%程度円安になり、1ドル=157円台で取引を終えました。

8月には大きな下落局面や為替変動がありましたが、ここ数年で運用を始めた人であれば、それなりに評価益が出ている人も多いのではないでしょうか。

※評価益とは、買った後に値上がりして増えた部分。例えば100万円で買ったものが120万円になっていれば、増えた20万円を評価益(含み益)と言います。

今回は、最近よくあるこんなご質問にお答えします。

「利益があるうちに売っておいたほうがいいですか?」

今後また値下がりしてしまうかもしれないと思うと、一旦利益を確定したいと思う気持ちもありますよね。どのように考えたらいいのでしょうか。

(楽天証券チャートシステムにてシグマ作成)

 

最近では特にインデックスファンド(eMAXIS Slim全世界株式「オルカン」、S&P500など)や、米ドル建て保険、米国株式などの評価益の対応方法についてご相談を受ける機会が増えてきました。

近々使う予定であれば、利益確定をしてもよいかと思いますが、当面使う必要のない資産で、投資自体は継続する予定だったら、どうすべきでしょうか。売却した後のことをあまり考えずに利益確定する人も少なくありません。「下落する前に安心したい」、「とりあえずは利益を確定したい」という気持ちになるかもしれませんが、ぜひ一度、売却する前に考えてみましょう。

 

2.評価益が出ている資産の“投資スタンス別アプローチ法”

評価益が出ている資産を売却して利益を確定させるか、そのまま保有するか適切な判断が求められます。ここでは、投資スタンス別の考え方や検討するべきポイントをまとめました。

 

■タイミング投資を前提とするケース

 

タイミング投資とは、値動きを見計らって「安いところで買って、高くなったら売る」ような投資スタイルです。政治イベントや経済指標などに注目し、タイミングよく投資判断をする必要があります。

もし、このスタンスで投資していれば、値上がりは利益確定のチャンスとも言えます。ただし、その後値下がりを待つ辛抱強さが必要かもしれません。すぐに同じような資産を買ってしまうと、下落局面では結局損をしてしまうかもしれないからです。再投資を検討している場合は、次の投資に備えて資金を現金化させるのもひとつです。時間を空けずに投資する場合は、株式などであれば異業種に投資したり、異なる資産クラス(株式・債券・投資信託など)に切り替えるのもありかもしれません。

以下に、タイミング投資をしたい方にむけてのアドバイスをまとめてみました。

タイミング投資をしたい方へのアドバイス

・全体の投資金額を決めて売買する(例:〇〇万円まで、全体の資産の〇%まで)

・最安値で買付、最高値で売却することは難しいと肝に銘じる

・万が一評価損が発生した場合は、ロスカット(損切り)も検討しておく

・個別の資産ごとでも良いので、運用目標(いくらになったら売却する)を決めておく

 

また、売買ごとにかかる手数料や売却益ごとにかかる譲渡益税なども考慮して投資判断をしましょう。NISA成長投資枠での売買は年間240万円が上限と決まっており、売却しても枠の復活は翌年となりますのでご注意ください。

■個別株式など長期投資を前提とする

 

個別の株式や「米国株ファンド」などのように投資先を絞り、その将来性に期待しているケースでは、敢えて利益確定をしなくても良いかもしれません。一時的には値下がりすることがあるかもしれませんが、それらの会社が業績を伸ばし続けるのであれば、きっと株価も回復してくれるはずです。迷ったときは、初心に立ち返って「なぜ投資したのか」を思い出してみるのもよいでしょう。

それでも、会社の実力以上に値上がりしていると感じる場合は、部分的に売るのもおススメです。あくまでも判断基準は株価ではなく、会社の実態そのものにおくべきだと思います。

投資信託も同様に、当初の目的が達成されたのであれば、売却を検討しても良いですし、期待以上に値上がりしているのであれば、一部を解約してリバランスをするのも手です。

くれぐれも、同じような資産を買わないようには注意しましょう。

資産運用の前に知っておきたい「リスク許容度」とは

 

保有継続の場合のアドバイス

・保有資産全体のリスク(想定される最大の損失)を予想しておく

・株式の場合、株価だけに惑わされることなく企業業績などに注目する

・インデックスファンドの場合、投資先の成長性など実態に着目する

3.ライフプランにあわせて検討する

例えば、利益の出ている米国株や投資信託を売却したと仮定します。

その資産があなたにとってどういったものか、以下にあてはめて考えてみましょう。

すぐ使う資産、数年以内に使う資産

  • 当面は使わない資産(値動きを抑えたい・使いながら運用したい)
  • 当面は使わない資産(値動きがあっても良い・使う予定がない)

売却後の投資はおすすめしません。株式など将来が見通せないもので運用するものはもちろんのこと、満期の決まっている債券であっても、米ドル建て債券であれば為替リスクなどがあるため注意が必要です。

 

②≪当面は使わない資産(値動きを抑えたい・使いながら運用したい)の場合≫

当面は使わない資産でも、値動きが怖いまたは運用しながら取り崩して使いたいと考えている資産については、ある程度リスクを抑えることが大切です。

予め複数の資産で運用するバランス型投資信託などを活用すれば、「オルカン」「S&P500 」など株式100%の投資信託に比べて変動を抑えることも期待できます。

また、証券会社によっては、定期解約システムを活用することができます。これを使うことで、毎月〇〇万円など自動解約し、定期収入を作ることも可能です。その際は、値動きが小さい(リスクが低い)資産にする方がよいでしょう。

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また債券であれば、投資元本に対して金利が出る仕組みなので、投資元本を解約せずに金利(≒利益)を受け取ることができます。

 

③≪当面は使わない資産(変動してもよい・使う予定がない)の場合≫

資産の変動に不安を感じにくければ、そのまま保有されるのも手かもしれません。

ただし、投資しているものがテーマを限定しているもの(AI・半導体)や局所的な投資先(例えば新興国の単一国)などで変動が大きい資産については注意が必要です。

今後のライフプランが変わることも考え、自動的に変動が少ない資産へ移行するもの(ターゲットイヤー型)や、運用途中で目標リスク・リターンを変更できるもの(ファンドラップ)などを活用しても良いでしょう。

・資産クラス(株式・債券・投資信託)に偏りがある場合は資産配分の変更も検討する

・出口戦略(解約タイミング・解約方法)も見据えた資産運用になっているか確認する

 4.事例から考える

A様(60歳・会社員)の事例をご紹介します。

 

ご自身で勉強されて総額2000万円分のポートフォリオを構築されていました。評価益がでている株式型の資産クラスについて売却すべきか悩まれていました。

まずは、保有資産の配分比率とリスク・リターンを試算してみました。資産クラス別の配分比率は以下の通りで、推計リスクは15%、期待リターンは8%という結果となりました。

「確かに株式資産が多めかなとうすうす感じていました。リスクは許容範囲内かなと思いますけど、今後は使うことも視野に、リスクも下げていきたいです。今投資している分は一部売却しても良いと思っています。」

A様のライフプランシミュレーションを実施したところ、この2000万円は今後15年~20年程度は使わない資産とわかりました。A様のご要望を鑑みて、以下の提案をさせていただきました。

(注)金利については、為替の変動、税金は考慮していません  (シグマ作成)

                   

■A様の要望

・債券運用も取り入れて、資産全体のリスクを下げたい

・仕事を完全退職する70歳から本格的な定期収入を作りたい

 

■ご提案

・当面使わない資産2000万円について、リスクを抑える資産(債券)と積極的なリターンを目指す資産(株式型)にわけ、投資計画をおおまかに作成(上図)

・リスクを抑える資産は現在評価益の出ている投資信託の一部を売却し、バランス型投資

信託(70歳からの切り崩し用)と米ドル建て債券(定期収入確保)に投資

・積極的なリターンを目指す資産は現在保有している株式型投資信託を継続保有をご提案

・あわせて特定口座→NISA口座への資産の入れ替えも行っていく

 

このように予め運用計画を立てることで、売却や購入の際の判断がしやすくなったり、目先の値動きに一喜一憂しにくくもなるでしょう。投資の知識や経験が少ない人ほど、しっかりとした計画を立てると良いと考えます。

4.まとめ

評価益が出ている資産については、利益を確定するか、継続保有するか、再投資するかなどの選択肢を慎重に検討し、できればそのタイミングでリスクとリターンのバランスを最適化することが重要です。

また税金や市場動向、感情的な影響も考慮しながら冷静な意思決定を行うことが、中長期的な資産運用の成功につながると考えています。

 

執筆者  村上 木綿子

シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(AFP)

大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)にて資産運用コンサルタントに従事。その後、みずほ銀行を経て、シグマ株式会社に入社。お客様のことを深く知って、お気持ちに寄り添ったアドバイスを心がける。お客様毎にライフプランに最適な資産運用を提案することはもちろんのこと、相続・遺言などにも強み。
【趣味】 神社仏閣巡り、甘味食べ歩き

【座右の銘】 日日是好日