定年退職を迎え、長年の勤務の対価として受け取った退職金。「老後の大切な虎の子」であるこの資金を、どう扱えばよいのか分からず銀行口座に置いたままにしていませんか?
特に60代の方からは、「現役時代のようにリスクを取って大きく増やしたいわけではない。でも、インフレで価値が目減りするのは怖い」という切実な声をよく伺います。
今回は、名古屋市在住の60代男性をモデルケースに、退職金2,000万円を「守りながら、長く安心して使い続ける」ための具体的な資産配分(ポートフォリオ)をご紹介します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
まずは、今回のシミュレーションの前提となるAさんの状況を整理します。
Aさんのように「生活費は年金でなんとかなるが、将来の大きな出費やインフレが不安」というケースでは、攻めの運用よりも「資産の寿命を延ばす運用」が正解です。
60代以降の資産運用には、現役時代とは異なる3つの壁があります。
すべてを投資に回すのは危険ですが、すべてを預貯金にしておくのも、今のインフレ社会においてはリスクとなり得ます。
そこで重要になるのが、「お金を3つの役割(ポケット)に分ける」という考え方です。
Aさんのための具体的な資産配分案がこちらです。
2,000万円を「使う時期」と「リスク許容度」に合わせて3つに色分けします。

① 生活防衛・流動性資金(守りの要)
【金額:800万円(全体の40%)】
いつでも引き出せる「現金の壁」を厚くし、精神的な安定を確保します。
主な置き場所
役割
② 安定運用資産(インフレ負けを防ぐ盾)
【金額:700万円(全体の35%)】
預貯金より高い利回りを狙いつつ、株式のような激しい値動きを避けるための「ミドルリスク・ミドルリターン」の層です。
具体的な投資対象
為替変動の影響を抑えながら、欧米の金利収入を狙います。
日本国債を中心に運用し、価格変動を抑えます。
期待する役割
③ 成長期待資産(資産の寿命を延ばすエンジン)
【金額:500万円(全体の25%)】
長生きリスク(長生きによる資産枯渇リスク)とインフレに対応するため、世界経済の成長を取り込みます。
具体的な投資対象
期待する役割
このポートフォリオが「60代向き」である理由
この配分の特徴は、株式比率を全体の25%にとどめている点です。
仮にリーマンショック級の暴落が起きて株式(500万円)が半値になったとしても、資産全体のダメージはマイナス250万円にとどまります。
総額2,000万円に対しては約12.5%の減少にとどまります。
さらに、手元には「比較的変動の少ない800万円」と「値動きの緩やかな700万円」が残っているため、「暴落時でも慌てて売却する必要がない(=安売りしなくて済む)」という環境を整えることが可能です。
運用と同じくらい大切なのが「使い方(取り崩し方)」です。
「定率」で取り崩す
毎月「◯万円」ではなく、残高の「◯%」を取り崩す方法があります。資産が減少しているときは受取額を減らすことで、資産の枯渇を先送りすることが可能です。
現金から使う
相場が悪いときは、運用資産には手をつけず、手元の「現預貯金ポケット(800万円)」から使用します。相場が回復したら、利益確定して現預貯金を補充します。
退職金運用のゴールは、資産を倍にすることではありません。
「お金の心配をせずに、趣味や旅行、お孫さんとの時間を心から楽しめる状態を築くこと」です。
このバランスを基本とし、ご自身の性格や家計状況に合わせて微調整していくのが成功の鍵です。
「自分の場合はどう配分すればいい?」「NISAはどう活用すべき?」といった具体的なシミュレーションをご希望の方は、ぜひ一度、個別相談をご活用ください。
※文中の各シミュレーションは、将来の運用成果を保証するものではありません。