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退職金・相続資金で住宅ローンの繰り上げ返済はおトク?

2021年4月1日


退職金や相続資金などで数百万円、数千万円のまとまった資金が入ったとき、何に使うのが最善の策と考えられるでしょうか。借入がある方なら全額返済して、すっきりと身軽になりたいと考えるかもしれません。

例えば、退職金を住宅ローンの繰り上げ返済に充当して、老後は借入なしの生活をするということも考えられます。退職金や相続資金は何に使うのが良いのか、また、住宅ローンを繰り上げ返済するメリットとデメリットについて見ていきましょう。

退職金や相続資金などの使いみちは?

人生において数百万、数千万のまとまった資金が入る機会はそう多くはありません。退職金や相続資金などが入ってきた場合、何に使う方が多いのでしょうか。よくある使い方を5つ紹介します。

老後資金として貯蓄

年金収入だけでは老後資金に不安のある方は、退職金や相続資金を老後のために残しておきたいと考えるでしょう。最近話題になった「老後資金2000万円」問題でも、リタイア後には平均的に毎月5~6万円が預金の取り崩しになるとされています。また、60歳に定年退職をし、65歳で年金受給を予定している方なら、5年間は無収入になる恐れがあるため、退職金等で備えておきたいものです。

生活費の補填

毎月の生活費が不足している場合は、退職金等を生活費の補填として使うこともできます。この場合、何度も少額ずつ取り崩すことになるため、あまり大金を使ったという印象が残りません。そのため、「気が付いたら退職金が半分になっていた」ということにもなりがちです。

資産運用

まとまった資金を元手にさらに増やしたいと考える方は、資産運用をはじめることも可能です。資金が大きいと、選択可能な投資商品の幅も広がるでしょう。株式、投資信託、不動産投資など、自分のライフプランに合った選択をすることが重要です。

住宅ローンの繰り上げ返済

借入をなくしたい方ならば、自動車ローンや教育ローン、奨学金などを一括で返済しようと考えます。ローンのなかでも特に金額が大きい住宅ローンの繰り上げ返済に充てたいと考える方も多いでしょう。

旅行やリフォーム

退職金や相続資金を旅行やリフォームに利用することもできます。今まで行ったことがない国に行ったり、自宅の中の「不便だけど我慢できないわけではない」部分を新しくしたりすることができるでしょう。

住宅ローンを繰り上げ返済するメリット

住宅ローンは最初に毎月の返済額を決めますが、途中でローン残金の一部または全部をまとめて支払うこともできます。これを「繰り上げ返済」と呼びますが、契約によっては手数料がかかるのでご注意ください。

退職金や相続資金で住宅ローンを繰り上げ返済することには、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

毎月の返済がなくなる

住宅ローンの残債を一括で返済するならば、毎月の返済がなくなります。住宅ローンに10万円を返済しているご家庭なら、毎月10万円支出が減るということです。生活にも余裕が生まれるでしょう。

 

また、残債の一部を繰り上げ返済する場合も、毎月の返済を減らしたり返済期間を短縮したりできます。毎月の返済額を減らせば支出は減り、返済期間を短縮すれば完済後は支出が減らせるでしょう。

利息を減らせる

ローンの利息は、借入残高が多いほど、また借入期間が長いほど増えます。つまり、借入額を減らすこと、あるいは借入期間を短縮することで利息を減らすことができるでしょう。

 

住宅ローンの金利は貸付条件にもよりますが、年0.4%~3.0%ほどが相場です(2021年3月時点)。カードローンなどの他のローンと比べると低金利ですが、借入額が大きいため、利息が高額になります。例えば、3,000万円を借りるなら1年で12~90万円の利息が発生することになりますが、繰り上げ返済をすることで借入残高や借入期間を減らすなら利息減が見込めるでしょう。

ローンによる心理的負担がなくなる

住宅ローンについて考えるだけで、気が滅入ってくる方もいるかもしれません。「あと20年も支払い続けなくてはならない」「まだ3,000万円も残っている」と思うと、早く完済してすっきりとしたいものです。繰り上げ返済をすることで、心理的負担も軽減できるでしょう。

住宅ローンを繰り上げ返済するデメリット

繰り上げ返済を実施することで、毎月の返済や利息の減少、そして心理的な負担の軽減と多くのメリットを得られます。しかし、繰り上げ返済はメリットばかりの行為ではありません。

 

まず考えたいのが、「繰り上げ返済手数料」です。契約や金融機関によっては繰り上げ返済手数料がかかることがあるので、確認しましょう。場合によっては、繰り上げ返済手数料のほうが繰り上げ返済をすることで減らせる利息よりも高額なこともあります。

 

繰り上げ返済を実施する前に必ずどの程度の利息が減るのかシミュレーションし、手数料以下の利息しか減額されないときは繰り上げ返済をしないようにしましょう。

現金での老後資金が減る

不動産や株式なども大切な資産ですが、いずれも思い通りの金額で現金化できるわけではないため、急な支出があるときには利用しやすいとはいえません。入院費用や学費などの支出に対応できるように、ある程度は現金を口座に入れておくことは大切なことです。

 

また、現金がないと、新たにローンを組む必要が生じることがあります。例えば、学資が足りなくて教育ローンを組んだり、リフォーム代が支払えなくてリフォームローンを組んだりすることもあるでしょう。

 

しかし、大抵のローンは住宅ローンよりも高金利です。そのため、繰り上げ返済をしてから別のローンを組むということは、低金利ローンから高金利ローンに乗り換えていることにもなりかねません。退職金等で住宅ローンを繰り上げ返済せずに現金資産として残しておくことも検討しましょう。

団体信用生命保険や住宅ローン減税が適用されなくなる

住宅ローンを組むときは、団体信用生命保険に加入することがあります。団体信用生命保険とはローン契約者に万が一のことがあったとき、例えば、契約者が死亡したり高度障害になったりした場合に以後のローン返済が不要になる保険契約です。契約によっては、契約者が糖尿病などの生活習慣病になった場合にも返済不要になるものもあります。

 

しかし、繰り上げ返済をして住宅ローン契約を解約すると、団体信用生命保険の適用も終了します。住宅ローン契約者に万が一のことがあっても、ローン返済免除などの利点はありません。

 

例えば、繰り上げ返済をした翌月に、ローン契約者に万が一のことがあったとしましょう。住宅ローン契約がまだ残っているならば団体信用生命保険が適用されて、残債はすべてなくなります。その場合、本来ならば保険適用で返済不要だった残債を返済したことになり、単に退職金や相続資金を減らしただけともいえるでしょう。

また、住宅ローンを借りる際のメリットの1つでもある「住宅ローン減税」の適用がなくなります。住宅ローン減税とは、ローンの支払い開始から10年間(2019年10月以降は13年間)、年末の住宅ローン残高の1%(一般住宅で上限40万円)が所得税から控除されるというものです。例えば、住宅ローンの年末の残高が3,000万円であれば、その1%の30万円分税金が戻ってくることになります。仮に住宅ローン金利が1%であれば、減税期間中は実質タダでお金を借りられているともいえます。

 

繰り上げ返済をした場合には、もちろんこのメリットも失ってしまうことになりますので、繰り上げ返済をする場合には十分な検討が必要と言えそうです。
ローン金利が低いなら資産運用も検討しよう

住宅ローンを高金利で借りている場合は、少しでも利息を減らすためにも退職金や相続資金で繰り上げ返済できます。しかし、団体信用生命保険に加入している場合や住宅ローン金利が低い場合は、焦って全額を返済する必要もないでしょう。

また、住宅ローン金利より高い利回りで運用ができるとすれば、繰り上げ返済しないで資産運用で増やすことも検討してみてはいかがでしょうか。もちろん大きなリスクをとってまでする必要はありませんが、年間2%~3%などの低リスク運用ができるのであれば、老後資金にも余裕が生まれ、より充実した生活を送れるようになるでしょう。

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執筆者 吉田 篤
シグマ株式会社 代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員補(CCMA)

大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。営業表彰やCS(顧客満足度)表彰などを受賞。その後、独立系のFP会社を経て、シグマ株式会社を設立。資産運用相談はもちろん、保険、相続対策、相続手続などについて、最適なプランニングを心がける。 若い世代から、シニアまでの「お金に関する悩み」の相談業務を行っている。

【講師実績】NHK文化センター、名古屋証券取引所、高年大学鯱城学園、名古屋市中小企業振興会、地元上場企業、東海東京証券など

【座右の銘】道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は戯言である

【趣味】温泉旅行、キャンプ、登山、釣り、ワイン会、読書(特に歴史に関するもの)