資産運用に興味はあるけど、どうやって始めたらいいのかがわからない。
こんな悩みをもっている方には、年代別に考える運用方法が参考になるかもしれません。
資産運用の方法は多々ありますが、年代別の適切な運用方法は意外とシンプルなものです。なぜなら、私たちは平等に歳を取り、同じようなライフステージを歩むからです。まず、20代から60代までの勤労者であれば、お給料などの収入があり、その範囲内で生活を賄っていきます。その過程で結婚や自宅購入、子育てなどのイベントが待ち受けています。そして、60代以降の退職後は、収入の大半を年金に頼る生活が一般的です。
まずは、運用方法の前に「目的」について考えてみましょう。
そもそも、あなたが資産運用を始めようと思ったきっかけはなんでしょうか。
「預金にしておいても増えないから。」
「まわりの人が資産運用を勧めてくるから。」
「相続で、株式や投資信託を引き継いだから。」
では、運用をする「目的」はどうでしょうか?
もしかしたら運用の目的について明確にできている人は少ないかもしれませんね。
資産運用を始めるうえで目的や目標を考えることはとても大切です。例えば、米国で「投資信託の購入理由」を聞いたところ、 7割以上の人が「老後の資金」と回答しています。一方で、日本人の場合は、「無目的の余裕資金」と答えた人が半数近くになっています。目的のない運用だと、ついつい短期目線で一喜一憂しがちです。その時々の値動きに惑わされて、冷静な判断ができないこともありえます。運用の目的が明確だと、保有期間やリスク許容度も決まり、より効率的な運用が可能となります。
もちろん人によって運用の目的は様々です。ここでは、一般的な運用目的として「老後ための資金づくり」と「老後の減らさない運用」の2つを考えてみます。
次に、リスク許容度という単語の意味を抑えておきましょう。これは「資産運用におけるリスク(運用資金の価格の変動)を、どれだけ許容できるか」という意味です。
年代別の資産運用を考える大前提として、一般的にはリスク許容度は年齢に反比例すると言われています。すなわち年齢を重ねるにしたがって取れるリスクの量は減っていくものとされています。若いうちは「リスクを取れる」が、高齢になるほど「安定的に」という言葉はよく運用の入門書などでも見たことがあるかもしれません。
これは、運用の目的を「老後のための資金作り」(仮に65歳時点で3,000万円)とした場合に、途中経過の50歳時点で運用資金が目減りしたとしてもまだ取り返すチャンスがあると考えられるからです。一方で、64歳の時に株価の急落などに見舞われ、一時的にでも大きく資産を減らしてしまっては、目的を達成するのは容易ではなくなります。ですから、目標までに期間がある(老後資金を目標とした場合の若いころ)のなら、相応のリスクをとってでも資産を増やすことを考えられるということなのです。逆に言えば、いくら若くても1年後に必要な資金であれば、リスクは取れない(当たり前ですが)ことになります。
それでは、本題の年代別の資産運用について具体的に見ていきましょう。ライフイベントの有無や生じる時期は人により様々だと思いますが、この項では一般的な勤労者のケースを例に取り上げます。
①20代
20代はまだ単身者が多く、生活費や教育費の支出を抑えることが可能であり、資金面からも知識面からも将来の資産形成における基礎を築くことのできる世代です。
一方で、収入はさほど多くない人が大多数でしょうから、投資に回せる金額も限定的です。まずは毎月少額でも良いので一定額ずつ投資信託の購入をするなど「積立投資」をスタートしましょう。つみたてNISAやiDeCoを活用することで、節税のメリットもしっかりと享受できるはずです。投資対象については、投資経験が少ないことを考慮するとシンプルでわかりやすく相対的にリスクが低い商品が望ましいといえます。しかし、若く将来的なリスク許容度も大きい世代でもあります。
投資に対して一定度の理解と経験を得たあとは、リスクが高めな株式型の投資信託に比重を置くことも良いかもしれません。
この世代では、リスク許容度の高さから考慮すると先進国、新興国の株式型を中心に一部に先進国の債券型を入れるのがよいでしょう。株式型と債券型の比率は概ね8対2くらいですが、より積極的に考えるのであれば全て株式型でもいいかもしれません。
②30代から40代
この世代では一般的に20代に比べて収入が増えますが、家庭を設ける人が多くなり、結婚・自宅購入・出産・子育てなどのライフイベントで相対的に支出が増える世代です。
つみたてNISAやiDeCoについては、始めるうえで遅い年代ではありません。目標を65歳とするならば、まだ期間も十分にあります。40歳であれば25年もの運用期間があるので、積極的な資産形成も可能と言えます。また、家計によって差が付き始めるのはこの頃でもあります。年収が400万円程度の家計もあれば、夫婦共働きで1000万円を優に超える家計もあるでしょう。貯蓄に余裕があれば、積立投資に加えて、余裕資金の一括運用も検討できる年代でもあります。ただし、一括運用の場合は積立投資に比べていっそうの注意も必要です。500万円、1000万円の資金が一時的にでも半分になってしまったら。一般的には平常心ではいられないでしょう。特に投資の初心者であれば、なおさらです。自分のリスク許容度に応じた資産配分がとても大切になります。ここでは、資産運用に強みをもつファイナンシャルプランナーなどのアドバイスを受けることも検討するとよいでしょう。
収入源は基本的に年金となり、仮に60歳以降に働いたとしても現役時代に比べ収入は大幅に減ることが一般的です。また、多くの人は勤務先を退職することで退職金を手にします。年金収入以外では、この退職金と現役時代に蓄積した資産を切り崩して生活することになります。現在の平均的な高齢者無職世帯の収入は21万円程度で、支出は27万円程度とされています。つまり、平均的な毎月の取り崩し額は6万円で、1年間では72万円です。勤労期では徐々に貯蓄ができてきていたものが、リタイア後は基本的には取り崩しとなります。ここで、資産運用の目的も大きく変わるものとなるはずです。すなわち、「老後の減らさない運用」です。これは単に運用しているお金を減らさないということではありません。何もしないと生活資金として取り崩していくことになるため、運用することで減るスピードを遅くさせるのです。お金の寿命も伸ばす感じですね。
運用のイメージとしては、大きなリスクを取って殖やそうとするのではなく、リターン3%程度を基準に、リスクは抑え目にして安定的な運用を心掛ける必要があります。仮に2000万円を3%で運用できたとすると、年間で60万円のリターンを得られることになり、取り崩しを大幅に防げるようになります。ここで参考となるのは年金運用です。
実は資産運用において最も難しいのは、取り崩しをしながら運用していくことと言われています。もし、あなたがある程度の知識と経験を持っていれば、銀行や証券会社の窓口で商品提案を受けてもよいでしょう。ただし、あまり自信のない方は、資産運用に強みをもつファイナンシャル・プランナーや、独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)に相談することをお勧めします。ライフプランに沿って、リスク許容度に合わせた運用プランを提示してくれるでしょう。
最後に、どなたにも参考となるコア・サテライト戦略についてお伝えします。コア・サテライト戦略とは、投資戦略について「長期にわたって計画的なポートフォリオ(年率3~6%程度をめざす運用)」をコア戦略(中核)、「テーマやタイミングを狙って積極的に増やすための投資」をサテライト戦略(衛星)と定義します。
多くの人は、サテライト戦略のみをしてしまうことがあります。
「今後は何が投資テーマになるだろう」
「今後株価が下がるだろうから売っておこう」
というのは、ここではサテライト戦略の考え方です。よほど知識がある方はサテライトのみで良いかもしれませんが、ほとんどの方はまずはコア戦略をしっかりと構築することが大切です。この異なる2つの戦略を理解し、今後の運用方針を考えてみると良いでしょう。
具体的には、コア戦略では資産クラスをしっかりと分散します。このとき大切なのは、資産分散を円ベースでみることです。多くのバランス型ファンドや最近流行りのファンドラップでは、世界中に分散投資をしていますが、その分為替のリスクが高まり、○○ショックのようなときには大幅に評価損を抱えてしまいます。(○○ショックの時は円高になることが多いため)これでは、とても安定的な運用とは言えません。もし、バランス型ファンドやファンドラップを選ぶのであれば、為替への対応がどのようになっているかを確認する必要があります。
また、サテライト戦略については、人によってはなくてもよい戦略とも言えます。
「個別の株式や、AIなどのテーマに興味がある」
「少し冒険して、資産を増やしたい」
と言う方は挑戦してもよいでしょう。ただし、その際は、必ずコア戦略を構築後にサテライトを考えるようにしてください。もしあなたが投資経験があまりない初心者であれば、サテライト戦略のみ運用は避けた方がよりでしょう。なぜならば、一時的にうまくいくことがあっても、長い目で見ると失資産を減らしてしまっている人が多いのが実情だからです。
大切なのは、あなた自身の年齢や予定されるライフイベントについて適切なリスク許容度を測り、適切な運用スタイルを取ることなのです。この記事があなたの適切な資産運用方法を検討する一助になれば、幸いです。