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選択型確定拠出年金とiDeCo、どっちがお得?

2021年5月28日


将来のお金の準備にはいろいろな方法があります。

その中でも税制メリットが特に大きく、ぜひとも有効活用していただきたい制度が「確定拠出年金(DC)」です。相談の現場でも、企業型確定拠出年金にすでに加入して積立投資を実行いている人も増えています。その企業型確定拠出年金のなかでも、自分の給与の中から掛け金を拠出するかを決められる「選択型確定拠出年金」というものがあります。選択型ですので、給与としてもらうか、将来のための掛金とするか、そしてその割合なども自分で決めることができます。
※選択型確定拠出年金の制度自体は、会社が導入していることが前提となります。

一方、個人が自らの判断で任意に加入できるのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。一度は聞いたことがあるワードかもしれません。

今回のテーマは、「選択型確定拠出年金」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」のどちらの方がお得かについてです。

結論から申し上げますと、「選択型確定拠出年金の方がiDeCoよりもお得」と言えます。

ただ、選択型DCには大きなデメリットがあります。このデメリットを知っておくことがとても重要です。

 

選択型確定拠出年金とiDeCoの比較

まずは、それぞれの制度の共通点についてです。

両制度ともに運用して増えた利益分について非課税です。この点はNISAも同様ですね。2つ目は、掛金は全額が所得控除の対象であり、所得税、住民税の節税が可能です。3つ目は、受け取り時に退職所得控除が使えます。

これらは、老後の資産形成をするうえで大きなメリットになりそうです。

次に、異なる点です。

「選択型確定拠出年金」の掛金は、社会保険料算定の対象から外れることが挙げられます。これは、iDeCoにない大きな特徴と言えます。


共通点 ①運用益が非課税である

    ②掛け金は所得控除が可能

    ③一時金で受け取る際、退職所得控除の対象になる

 

違い  ④選択型確定拠出年金の掛金は社会保険料算定の対象から外れる

 

選択型確定拠出年金のメリット

選択型確定拠出年金は、掛金が社会保険料算定の対象から外れるため、結果として社会保険料の支払額を圧縮されるメリットがあります。

なぜ、そうなるのか簡単に解説します。

「選択型確定拠出年金」に加入し、掛け金を拠出すると、その掛け金は給与とはみなされなくなります。例えば、給料が月額30万円のうち2万円を拠出したとすると、給料が28万円とみなされます。(給与明細も通常はそのように反映されます)これによって、社会保険料の計算に用いられる標準報酬月額が下がることで社会保険料が安くなりうるのです。

iDeCoの場合は、税金や社会保険料を支払った後の手取り給料から掛け金を拠出するため、上記のように標準報酬月額が下がることもなく社会保険料の圧縮は起きません。

 

では、どのくらいの圧縮効果が期待できるのでしょうか。

ざっくり計算ですが、社会保険料の個人負担額はおよそ給料の15%程度ですので、掛け金の15%程度の社会保険料負担が減少するイメージです。

例えば月3万円選択型確定拠出年金にかけていると、毎月4500円程度減る計算になります。

(30,000円×約15%=約4,500円)

仮に40歳~60歳まで20年間掛けたとすると、108万円ものもの軽減効果があります。大きいですね。

(4,500円×12ヶ月×20年=108万円)

 

これだけ見ると選択型確定拠出年金の方に軍配が上がりそうですが、社会保険料の支払いが減ることによるデメリットについても知っておく必要があります。

 

選択型確定拠出年金のデメリット

 

社会保険料は主に

①健康保険料

②介護保険料

③雇用保険料

④厚生年金保険料

 

の4つから成り立ちます。このうち、①健康保険料③雇用保険料④厚生年金保険料の3つにデメリットが生じる可能性があります。(②の介護保険料は影響がありません)

 

まずは①健康保険料と③雇用保険料への影響についてです。

健康保険料が減ることは、出産手当金と傷病手当金が減ることに繋がります。

雇用保険料が減ると、失業手当、介護休業給付、育児休業給付の減少に繋がります。

いずれも給付される際には、先ほどの標準報酬月額を基に計算されます。標準報酬月額が低くなることで保険料が減少しますが、同時に給付額にも影響を与えることには注意が必要です。

これを踏まえて、例えば今後出産を控えている人や育児休業を予定している人は掛け金を、一時的減らすなどの対策をしてもよいかもしれません。

 

将来の年金額への影響を考える

 

次に④厚生年金保険料への影響についてです。

厚生年金保険料が減ると、将来受け取る老齢基礎年金が減少に繋がります。

どのくらい減少するのでしょうか。

将来受け取る厚生年金額は下記のように計算されます。

(報酬比例の部分)
平均標準報酬月額 x 5.481 ÷ 1000 x 加入期間の月数

 

例えば、ある人の平均標準報酬月額が50万円で20年の加入期間がある場合、将来受け取る老齢厚生年金の予定額は

500,000円 x 5.481 ÷ 1000 x 240ヶ月=657,720円

となります。

 

仮にこの人が、毎月3万円を確定拠出年金にかけたとすると、平均標準報酬月額は47万円に下がります。

※参考:標準報酬月額等級表(厚生年金) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0306-10e-03.pdf

この場合、将来受け取る老齢厚生年金の金額は、

470,000円 x 5.481 ÷ 1000 x 240ヶ月=618,257円

となり、かける前と比べて39,463円減少します。

 

もし、65歳から90歳まで受け取ったとすると、39,463円×25年=986,575円の受取減になりますね。

 

先ほど、40歳から60歳まで月3万円かけた場合の社会保険料圧縮金額が約108万円ということでしたから、25年程度の年金受取期間となる場合には圧縮額と同じくらい受け取れる年金額が減少するという事になりました。

 

また、遺族年金や障害年金の給付額にもマイナスの影響があることにも注意が必要です。

 

 

 

まとめ

選択型確定拠出年金は、①運用益非課税、②所得控除、③退職所得控除が使えるメリットに加え、④社会保険料が軽減される可能性があります。そのため、iDeCoに比べてお得と言えそうです。ただし、様々な給付金が減少する、将来の年金額が減少するなどのデメリットには注意が必要です。特に資産形成を考えるうえでは、将来の公的年金額が減少するのはマイナス要因になります。増えた手取り収入で上乗せ運用するなど工夫が必要ですが、結果的にはメリットの方が勝ると考えます。
「社会保険料が減ってラッキー」とは考えずに、そのお金で積極的に将来のために資産形成をしていただきたいと思います。
勤めている会社で選択型確定拠出年金の制度があればぜひ積極的に利用しましょう。


執筆者  藤原 達彦

シグマ株式会社 執行役員
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

九州大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事し、営業表彰などを受賞。今まで以上にお客様視点で物事を考え、一人でも多くのお客様の役に立ちたいとの考えからシグマ株式会社に入社。丁寧なヒアリングとライフプランからお客様毎の課題を明確にし、最適な資産運用提案を心がける。

【趣味】自己啓発、四季報の読破、お酒、トレーニング・ジョギング

【座右の銘】継続は力なり

【講師実績】 名古屋証券取引所IRエキスポ2017、2018