相続税は、平成27年1月より相続税基礎控除額が6割に減額され、多くの人が相続税対策の必要性に迫られています。
この相続税対策では、様々な非課税枠の利用と併せて、アパート建築による相続税評価額の圧縮が大変効果的です。
もちろん、相続税対策としてのアパート建築は、大変お金と労力のかかるデメリットもありますが、1~2年程度の期間で大きな評価減を実現できる対策といえます。
今回は、この相続税対策としてのアパート建築の有効性を紐解いていきます。
まず、具体的に課税遺産総額8,000万円で相続人が妻と子ども1人のケースで説明してみましょう。
この場合、基礎控除額は、3,000万円+600万円×2人(妻と子ども)=4,200万円です。
8,000万円-4,200万円(基礎控除額)=3,800万円
妻 3,800万円×1/2(法定相続分)=1,900万円
1,900万円×15%(税率)-50万円(控除額)=235万円
子ども 3,800万円×1/2(法定相続分)=1,900万円
1,900万円×15%(税率)-50万円(控除額)=235万円
235万円(妻)+235万円(子ども)=470万円
妻 470万円×1/2(法定相続分)=235万円
ただし、配偶者控除により税額0円となります。
子ども 470万円×1/2(法定相続分)=235万円
まず、評価額1億円の自用地に5,000万円のアパート建築をするケースについて説明します。
土地は、貸家建付地となり評価額の算出は下記の通りとなります。
貸家建付地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
仮に、借地権割合を0.7、借家権割合を0.3、賃貸割合を1.0とした場合、
1億円×(1-0.7×0.3×1.0)=7,900万円となります。
すなわち、1億円-7,900万円=2,100万円の評価を下げて、相続税の軽減を図るこ
とができます。
建物の評価は、固定資産税評価額(建築費の約6割)となり、評価額の算出は下記の通りとなります。
固定資産税評価額3,000万円×(1-借家権割合×賃貸割合)
仮に、借家権割合を0.3、賃貸割合を1.0とした場合、
3,000万円×(1-0.3×1.0)=2,100万円となります。
すなわち、5,000万円-2,100万円=2,900万円の評価を下げて、相続税の軽減を図
ることができます。
さらに、銀行からアパートローンとして借り入れすると、債務控除の適用を受け
ることができ、残債が遺産総額から差し引かれます。
アパート建築をした土地は、「小規模宅地の特例」の適用を受けることができ、そ
の土地の200㎡までの部分は相続税評価額を50%下げることができます。
この特例措置は、マイホームの建築時に適用されるケースが多いですが、アパート
の方がこのメリットを最大限に有効活用できます。
銀行からの多額のアパートローンを組んだ場合は、しっかりとその返済計画を長期的に策定する必要があります。
この返済計画が甘いと、アパートローンの返済が子どもや孫の負担リスクとして重くのしかかりますので、アパート建築が相続税の軽減以上の損失を招くことになります。
アパート建築後のリフォームなどのメンテナンス費用もしっかりと見積りをして、
その準備資金も確保して、必要に迫られた時に慌てないようにしておきましょう。
建築業者の甘い入居率の算定に惑わされることなく、自分自信で周辺の人口に対するアパート・マンション戸数や入居率及び今後のアパート経営の将来性の展望を複数の建築業者、不動産業者及び取引銀行担当者等にヒアリングすることが大事です。
たとえば、築年数の浅い期間は満室となっていたとしても、年月とともに建物の老朽化が進行していくことによる入居率低下リスクや景気動向や金融政策等による不動産市況沈滞化等のリスクを10年から20年のスパンで長期展望する必要があります。
相続税対策としてのアパート建築は、人生の終焉において大きな決断を迫られますが、
相続トラブルや相続税支払いのための居住不動産の売却など子どもや孫に禍根を残さないためにも、一念発起してチャレンジすることが必要です。
まずは、相続人とコンセンサスを緊密にしながら、最終的には被相続人のクイックレスポンスな決断と対応が肝要となります。
そして、相続税対策による税負担軽減だけにとどまらずに、遺産相続をした後の青写真を
子どもや孫に引き継いでもらう方策をしっかりと策定して、スムーズに遺産を移行できるようにしておきましょう。
そのためにも、遺言書やエンディングノートなどを利用して、きっちりとした文書で自分自身の意思表示をしておくことが大切です。