「債券」という言葉を聞いたことはあっても、 “株式とはどう違うの?” “どんな仕組みなの?” と疑問を感じる人は少なくありません。
実際、投資の世界で債券はとても重要な存在なのに教わることがないため、 初めて学ぶ人にとってはイメージしづらい商品です。しかし、仕組みさえ理解すれば、 資産形成において重要な“基礎の1つ”となります。
この記事では、 「債券とは何か」「どうやって収益が生まれるのか」 という基本から、初心者でも押さえておきたいポイントまで 詳しく解説していきます。
まず最初にお伝えしたいのは、 債券とは“お金の貸し借りを形にしたもの” という点です。
国や企業が、必要な資金を集めるために
● 「いくら借ります」
● 「いつ返します」
● 「利子はいくらです」
という“約束”を書面にして発行したものが「債券」です。
つまり、債券を買うことは、 国や企業にお金を貸す ことを意味します。
株式は「出資」ですが、 債券は「貸付」に近いイメージです。
さらに債券には、
● あらかじめ決まった利子(クーポンとも呼ばれる)が定期的に受け取れる
● 満期が来たら元本が戻ってくる
という特徴があり、投資初心者でも理解しやすい金融商品です。
債券の歴史はとても長く、 世界で最初に発行されたのは中世ヨーロッパと言われています。昔の国家は、 道路・港・防衛などの費用をすぐに準備する必要がありました。 しかし、税収だけでは賄えない場面も多く、 国民から資金を調達する手段として「債券」が誕生したとされています。
現代では、次のような形で広く利用されています。
● 日本国債・米国債などの「国債」
● トヨタやソニーなど企業が発行する「社債」
● 名古屋市・愛知県など自治体が発行する「地方債」
つまり、債券は 国家も企業も個人も利用してきた伝統的な仕組み です。
債券投資で得られる収益には、大きく3つあります。
① 利子(クーポン)を受け取れる
その中でも特徴的なのが、 ”債券を保有している間にもらえる利子(クーポン)”です。
これは株式の配当に似ていますが、 株式のように業績によって増減しにくい点が特徴です。
たとえば、
● 元本100万円に対して毎年1万円の利子
● 年2回に分けて受け取る
● 満期まで継続してもらえる
といったように受け取り方が固定されている債券も多く、 資産計画が立てやすくなります。
② 満期に元本が返ってくる仕組みがある
債券には 「満期(償還)」 が設定されています。 これは発行体と投資家の間で約束された返済日です。満期が来ると、発行体(国・企業)が 額面に応じて元本を返却します。途中で価格が上下していても、 満期まで保有することで元本が返済される、という性質があるので、資産をゆっくり育てたい方にとって利用しやすい特徴です。
③ 市場金利に合わせた価格の変動(売却益)もある
債券は市場で売買されているため、 株式と同じように 途中で売却して利益を得ることも可能 です。価格が上がれば利益になり、 逆に下がれば損失になることもあります。ただし、この値動きには市場金利(世の中の金利)との関係が非常に大きく影響するため、 次の章で詳しく解説します。
債券を理解する上で特に重要なのが、金利が上がると債券価格は下がる 金利が下がると債券価格は上がるという性質です。
▼図解:金利と債券価格の逆相関

なぜこうなるの?
たとえば、「金利2%の債券」を持っているとします。その後、市場金利が上昇し「金利4%の債券」が出回るようになりました。そうすると「金利2%の債券」を買いたいと考える人は少なくなるため、 価格を下げないと“見合う利回り”になるので価格は下がります。
つまり、
● 金利上昇 → 昔の債券の価格が下がる
● 金利低下 → 昔の債券の価格が上がる
という動きが生まれます。
これに影響するその他の要素
債券の価格は、金利以外にも次の要素で動きます。
● 発行体の信用力(格付け)
● 満期までの期間やデュレーション※
● 市場の需給
※デュレーションとは、金利が変動したときに、債券の値段がどれくらい動きやすいかを示す“値動きの敏感度”の指標です。長ければ長いほど、金利の変化に敏感という意味です。
債券投資には、初心者にとって取り入れやすいメリットがいくつかあります。
① 値動きが株式より落ち着いている
債券は株式より価格の上下が穏やかな傾向があります。 ゆっくり資産を増やしたい人や、 急な値動きが気になる人に向いているといえます。
② 利子が定期的に得られる
利子収入(インカムゲイン)が得られるため、 資産形成のペースが読めるという特徴があります。 年金生活を見据えている世代にも利用される理由の1つです。
③ 満期まで持つと元本返済の仕組みがある
途中の価格変動が気になっても、 満期まで保有することで元本を受け取りやすい構造は債券ならではです。
④ 株式と組み合わせることで値動きがなだらかになりやすい
株式と債券は違う動きをすることが多いため、 一緒に組み合わせることで資産全体の値動きを落ち着かせる、という効果も得られます。
メリットだけでなくデメリットもしっかり理解することが大切です。
① 金利上昇に弱い
金利が上がる局面では、 債券価格が下がりやすくなります。
② 発行体の返済能力によっては元本や利子が支払われない場合がある
債券には「発行体の信用力」が大きく関係します。 企業の場合は業績悪化で返済が困難になる可能性もゼロではありません。
③ 外貨建て債券は為替変動の影響を受ける
例えば米国債の場合、 ドル円の動きによって、円換算の価値が変わります。
利回りが良くても、為替の変動次第で 受取額が増減することがあります。
④ インフレで利子の実質的な価値が薄まることがある
物価が上がると、 固定された利子の“実質的な価値”が下がることがあります。
債券の「格付け」とは?
債券を発行する国や企業が、 どれくらい返済できる力があるかを示した評価が「格付け」です。 S&Pやムーディーズなどの格付け会社が、A、B、Cなどの記号で評価します。
高い格付けの債券は返済能力が高いとされ、 利回りは抑えられる傾向があります。一方、格付けが低くなるほど利回りは高めに設定されますが、その分リスクも大きくなる傾向があります。
債券を選ぶときは「格付け」も参考になります。 以下のように、記号によって債券の特徴を大まかに把握できます。
▼ 主な格付けの目安

利回りの高さだけで判断するのではなく、ご自身の目標やリスク許容度と照らし合わせながら、適切な水準を選ぶことが大切です。
初心者が知っておくべき主要な債券を紹介します。
① 日本国債・米国債(国債)
国家が資金調達のために発行する債券です。
② 社債(企業が発行する債券)
企業が資金調達のために発行する債券です。
社債は、発行する企業の返済能力を示す「格付け」によって呼び方が分かれることがあります。
● 投資適格債(インベストメントグレード) 格付が BBB以上 の債券を指します。 返済能力が比較的高いと評価されることが多く、利回りは抑えめになる傾向があります。
● ハイイールド債(高利回り社債) 格付が BB以下 の債券が該当します。 利回りが高めに設定される一方で、価格の動きが大きくなる場合があります。
③ 劣後債
一般の社債よりも返済順位が低いかわりに、 利回りが高めに設定されることがあります。
④ 外貨建て債券
ドル建て・ユーロ建て・豪ドル建てなど、 為替の影響を受けるタイプです。
⑤ 新興国債券
利回りが高い一方、 政治や経済の変動を受けやすい性質があります。
● 値動きが大きい投資が苦手な人
● 利子収入を受け取りたい人
● 長期間かけて資産を育てたい人
● 株式とのバランスを取りたい人
など、幅広い人が利用しやすい投資対象です。
Q:金利が上がると債券価格が下がるのはなぜ?
A:新しい債券の利子のほうが魅力的になるため、 昔の債券の価格が調整されるからです。
Q:満期まで持てば本当に元本が返るの?
A:発行体の返済能力によります。国債や一定の格付けの社債は返済実績が積み重ねられていますが、最終的には発行体の状況によって変わります。
Q:利回りが高い債券はお得?
A:利回りが高いほど、リスクも高い傾向があります。利回りだけで判断しないことが大切です。
Q:米国債は人気があるけど、リスクはある?
A:発行体の信用力が高いものでも、ドル円など為替の動きによって、円換算の価値が変動します。為替の影響を踏まえて選ぶことがポイントです。
● 発行通貨(円、もしくは米ドルなどの外貨)によってリスクが変わる
● 金利が債券価格に与える影響を理解する
● 突出して利回りが高い債券は、何かしらの理由があると考える
● 債券ファンドを使う場合は、組み入れ債券の満期までの期間(デュレーションで表現されている場合もあります)や格付け、債券の種類を確認する
債券は、株式と並ぶ“欠かせない資産クラス”です。 目的に合わせて持ち方を工夫することで、 長期にわたる資産形成の土台として役立ちます。
次のステップ:あなたに合った債券の選び方
債券とひとことで言っても、種類や特徴は本当にさまざまです。
● 日本国債
● 米国債
● 社債(企業が発行する債券)
● 新興国の債券
● 外貨建て債券
● 投資信託を通じての債券ファンド
それぞれが「どんな目的に向いているか」「どんなリスクがあるか」は大きく異なります。
たとえば、
● 毎年の利子を受け取りたいのか
● 一定期間のあいだ、価格変動を抑えながら運用したいのか
● 外貨で資産を持ちたいのか
● 満期まで保有することを想定しているのか
といった目的によって、選ぶべき債券は変わってきます。
株式と債券を組み合わせると、株式の値動きが大きいときに役立つ?
資産運用では、株式と債券を組み合わせることで 資産全体の値動きを落ち着かせる効果が期待できると言われています。
株式は成長を取りにいく資産である一方で、 市場が大きく動くと価格が上下しやすくなります。 そのような場面でも、債券は株式とは異なる動きをすることが多いため、 株式が下がったときに資産全体が一方向に偏りにくくなるという特徴があります。
このような理由から、 「株式中心で運用したいけれど、値動きが気になる」 という方が、債券を組み合わせるケースもよく見られます。
債券選びが“難しく感じる”理由
初心者の方がよく迷うポイントは次のようなものです。
● 「日本円で持つべき?ドル建てで持つべき?」
● 「利回りが高いと聞いたけど、本当に自分に合っている?」
● 「期間が長い債券と短い債券、どちらが向いている?」
● 「社債ってどのくらいリスクがあるの?」
● 「投資信託を通じて持つほうがいいのかな?」
どれも“間違い”ではありません。 ただし、あなたの状況によって“合うもの・合わないもの”が出てくるのです。
債券は「年齢・目的・運用期間・リスク許容度」で相性が大きく変わる
一般的に、債券の選び方には次のような視点が関わります。
● 年齢・ライフステージ
20代・30代と、60代・70代では「資産の役割」が変わります。 時間を味方につけられる人と、資産の寿命を意識したい人とでは、選択肢が違ってきます。
● 投資の目的
● 将来のためにじっくり育てたい
● 外貨で資産を保有したい
● 定期的に利子収入を得たい
● 値動きをなだらかにしたい
目的によって、国債・社債・外貨建て債券・短期/長期など、適した種類が変わります。
● 運用期間(どれくらいの時間運用するか)
数年だけ保有するのか、10年以上の長期なのかで、 価格変動の受けやすさ(デュレーション)が変わります。
● リスク許容度(どの程度の値動きなら大丈夫か)
利回りの高さには理由があります。 信用リスク・為替リスク・期間リスクなど、債券ごとに特徴があるため、 「どの程度の値動きなら許容できるか」を整理することが大切です。
自分に合った債券を見つけるためには、整理すべきポイントがいくつかあります
初心者向けに、まずは次の質問をチェックしてみてください。
● どれくらいの期間、運用する予定ですか?
● 利子収入を重視しますか?
● 途中で売却する可能性はありますか?
● 日本円だけではなく、外貨建ても検討しますか?
● 値動きについて、どの程度までなら落ち着いて見ていられますか?
これらが整理されると、 「あなたに合った債券」が自然と明確になっていきます。
債券は、“誰でも同じものが正解”ではありません
債券は株式と違い、 同じ発行体でも種類によって性質が大きく異なるため、 “誰にでも同じように利用できる商品”ではありません。
むしろ、 ひとりひとりの状況に合わせて選ぶことで魅力が発揮される金融商品です。
同じ「米国債」であっても、
● 期間
● 通貨
● 利回り
● 証券会社での購入方法 などで選択肢が分かれます。
「専門家に相談する」という選択肢もあります
特に、こんな方は相談の価値があります。
● 「債券のどこを見ればいいかわからない」
● 「外貨建て債券に興味はあるが、判断材料が足りない」
● 「価格変動の仕組みがまだ不安」
● 「自分にどれが合っているかを客観的に知りたい」
債券は“単純なようで奥深い”資産クラスです。 ひとりで悩むより、状況を聞き取りながら希望に合わせて説明してくれる専門家に相談することで、 自分に合った運用方法が見つけやすくなります。
まとめ:債券は、目的に合わせて「使い分ける」ことが大切です
債券は、株式と並ぶ代表的な投資対象であり、 長期の資産形成に役立ちやすい資産です。
ただ、 目的・年齢・通貨・期間・リスク許容度 がそろわないと、 本来の良さを発揮しにくい場合もあります。
まずはゆっくり整理しながら、 「自分に合った債券とは何か」を一緒に考えていきましょう。

執筆者 山本 洋平
シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
宅地建物取引士
大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。より一層お客様目線のコンサルティングがしたいと考え、シグマ株式会社へ入社。
お客様の真の相談相手になりたいと考え、親身なコンサルティングを心がける。お客様の現状と将来目標をしっかりと分析し、目標を達成するためのプランを立案。金融商品も証券アナリストの目線から厳選。
【趣味】ワイン、ゴルフ、社交ダンス、YouTubeで猫とカワウソの動画を見ること
【講師実績】名古屋証券取引所IRエキスポ2019、資産運用基礎講座