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資産1億円の分散投資、ポートフォリオの考え方

2024年6月11日


最近、日本や米国で株価が大きく上昇しており、日経平均株価は1989年の高値を約35年ぶりに更新しました。株高の影響もあってか、直近の相談事例でも、金融資産が1億円以上を保有されている方が相談に来られるケースも増えて来ています。

金融資産が多いか少ないかに関わらず、お客様の悩みや課題はそれぞれ違います。

ただ、資産額が多くなればなるほどリスクを抑えた運用を希望される傾向にあると感じます。株高で増えた資産を、さらに増やそうとするのではなく、今後の値下がりを避けたいと考えるのは自然なこともかもしれません。

実際に相談者の方からは、「最近の円安と株高で資産は増えましたが、いつか株は下がるのではないですか?」と心配される声も聞かれます。

実は運用の世界では、少額の資産を積極的に増やしていくことよりも、大きな資産を守りながら増やしていくことの方が難しいとも言われています。

今回は、金融資産を1億円以上保有されている方からの相談事例より、資産運用をする際の注意点について考えてみます。

 

金融資産1億円以上で考えるべきこととは?

まずは、1億円を超えるなど大きな資産を持っている場合に、考慮すべきリスクについて検討してみましょう。

インフレリスク

1つ目はインフレリスクです。日本でも様々なモノが値上がりしてきていますね。インフレと言うのは、モノの値段が上がる=お金の価値が下がることを指します。もし、現状のような年率2%のインフレが10年間続いたとすると、10年後には約20%程度お金の価値が下がることになります。

1000万円の資産であれば、200万円の目減りですが、1億円だと2000万円の目減りとなります。当然ですが資産を多く持っている人の方が目減りする「額」は大きくなります。


価格変動リスク

投資する際に必ずつきまとうのが価格変動リスクです。値上がり、値下がりのリスクですね。株式投資をする場合、良い年は30%値上がりすることもあれば、悪い年は30%値下がりすることもあります。

これも、インフレと同じで、1000万円の投資で30%値下がりすれば300万円の損ですが、同じものに1億円投資していれば3000万円の損失を被ります。

金額が大きくなれば変動「額」も大きくなるため、よりリスクを抑えることか重要となります。

リスクの大きさについては、GPIF(日本の年金運用)の想定が参考になりそうです。GPIFによれば、世界株のリスクを27.3%としています。これは1年間の平均的な上下の値動きを27.3%と想定していることを意味します。また、最大想定下落率はこの2倍になるため、54.6%の下落が起こりうるという計算です。

ここ10年程度は、世界の株式資産は好調ですが、相応のリスクがあるものと考えておくべきでしょう。

少額からの積立投資であれば、世界株100%でも良いかもしれませんが、まとまった資金になった際には、よりリスクを抑えた運用を望むのにも納得がいきます。

 

1億円で資産運用する際の注意点は?

そう考えていくと、一体どのように投資先を見つけていけばいいのでしょうか。

一般的には、「どんな商品を、いつ(どのタイミングで)買うか?」ということが話題になりがちです。

もちろん、将来最も値上がりする資産を的確に当てることができて、それを最も安いタイミングで買うことができればベストですが、それこそ宝くじを引くほどに難しいでしょう。

反対に、高値掴みをして大きく下落してしまう可能性だってあります。

もしも、1億円以上など大きな資産を運用する際に、よりリスクを抑えたいと思われれば、キーワードになるのはやはり「分散投資」です。

ただし、6資産均等や8資産均等のように単に分散すれば良いとは限りません。

現状や将来の経済情勢を考慮しながら、より効率的な運用をするのであれば、株式や債券の分散はもちろんのこと、金や不動産(REIT)などへの投必を検討してもよいでしょう。円貨、外貨のバランスも重要です。そして、もっとも大切なのは、それら投資先の投資比率を考えることです。このように投資先と比率を決定することを資産配分(アセットアロケーション)といいます。

欧米の研究でも資産配分の重要性が明らかにされており、パフォーマンスの8割を占めるとまで言われています。

長期的に資産運用を成功させるためにも、十分に資産配分を検討したいものです。

 

1億円の資産配分(アセットアロケーション)の考え方

1億円以上の資産運用の考え方がわかってきたところで、実際どのように資産配分、ポートフォリオを構築したらよいのでしょうか。

その前に、1つ知っていただきたいことがあります。資産配分にも大切な原則があるということです。

それは、ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンの原則です。

資産運用を効率的に成功に導くためには、資産配分は重要な要素ではありますが、決して万全なものではありません。常にローリスク・ハイリターンとはいかないのです。

となれば、投資をする人が、どれくらいのリターンを必要としていて、どの程度のリスクまでなら許容できるかを予め決めておく必要があります。また、投資によって資産を殖やしていきたいのか、あるいは、元本を増やすのではなく金利などの収入を得たいのかを明確にすることも大切です。

事前に自身の将来像を想定して、目標リターンや許容リスクを決定するようにしましょう。

次に、資産配分の基本的な作り方です。一般的には伝統的資産とされる株式と債券をどのような比率で配分するかが議論の中心となります。

ハイリスク・ハイリターンを目指す場合は、例えば株式:債券が80:20のように株式の比率を高めます。ローリスク・ローリターンで十分と言う場合は、債券を中心とした配分になります。

そして、株式資産のなかでも、日本、米国、欧州、新興国や大型、中小型、高配当など地域やジャンルについて検討します。債券についても同様に、通貨や発行者の信用力、満期までの期間を決めていきます。

また、金利情勢や社会情勢を踏まえて、金やREIT・コモディティなどの代替資産(オルタナティブ)への配分を検討してもよいでしょう。

ここまで事細かにできない場合や状況に合わせて資産配分の変更をすることが難しいといったケースもあるでしょう。そんな方は、これらを実行してくれるような投資信託を活用することも1つかもしれません。

ここからは、ご参考までに実際の相談事例をみていきましょう。

事例) 相続資産での資産運用

50代 女性 金融資産1億2000万円

【お客様情報】

  • お父様より証券等を相続したが、投資の知識がなく、何から始めたら良いか分からない。
  • 普段は会社勤めで、投資知識の習得の時間や状況の確認をする時間がなく、余暇があれば趣味を楽しみたい。基本的には放ったらかしの運用をしたい。
  • 趣味はピアノと旅行。音楽関係にお金を使いたい。

 

【運用方針の決定】

目標リターンやリスク許容度を決定するために、まずライフプランシミュレーションを作成し、課題を見える化しました。

夫が退職してからは、資産を取崩すことになりそうであり、取崩し分を運用資産から捻出することを目的としました。

 

【運用の目標】

夫の退職後も趣味や旅行を楽しみつつ、安心できる老後を送るために、インフレを考慮して年4%程度をリターン目標としました。

 

【ご提案概要】

  • 「仕事や趣味に専念したい」「資産が大きく増えなくても良いが、大きく減らしたくない。」「放っておける運用をしたい」との希望から、債券中心の穏やかな資産配分を提案しました。また経済情勢に合わせて投資先の見直しなど、配分変更を適時行う投資信託を選定しました。
  • 一部では、株主優待を楽しみたいたいとのご要望があり、優待株を提案しました。

想定リスク 8%   期待リターン4.5%

 

内訳(概算)

預金 2000万円
日本株式500万円
投資信託(世界株型)1500万円
投資信託(ミックスアセット型)3000万円
米ドル建て債券5000万円(5銘柄へ分散)(年間受取利金約250万円)

まとめ

1億円を超えるなど資産が大きなケースでは、より慎重な運用を希望する人が増えてきます。

そんなときには、株式や債券などのバランスを調整することで、リスク・リターンをコントロールすることが大切です。

資産が大きくなればなるほど、ちょっとした値上がり値下がりでも「資産額」が大きく変動します。これまでの相談経験でも、想定以上の下落で怖くなって損切してしまったり、まわりの人のパフォーマンスが気になって高値掴みをしてしまうことがよくあります。

合理的に判断しているつもりでも、ついつい感情的に流されてしまうものです。

事前に運用の目的や目標を決めて、下落リスクを想定しておくことで最適な運用を継続することこそが成功への第一歩だと思います。

運用を始める前の手順として以下を参考にしていただければ幸いです。

 

Ⅰ 運用の目的を考える

資産を増やす必要があるのか、使っていきたいのか、家族へ遺したいのか(相続)、そもそも何のためにをするのかなど検討する。

 

Ⅱ 運用の目標を考える

目的を達成するための数値目標を決定する。

・〇〇年後に、〇〇万円の資産を作る。

・年率〇〇%で運用をする など

 

Ⅲ 運用計画を立てる

目標を達成するための、最適な資産配分を考える。

運用を継続できるような自分に見合ったリスクかの検証も行う。

(修正が必要な際は、再度目標を考え直すことも)

※自分だけで難しい場合は専門家の意見を求めることも検討する。

 

Ⅳ 定期的に確認する

年金開始時などのライフイベントが発生する場合は、資産全体バランスが適切かどうか再確認する。

金融・経済の環境が大きく変化した際には、現状の配分でよいかを検討しなおす。

 

 

執筆者  北 辰一郎

シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(CFP)

大学卒業後、大和証券に入社。 個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。営業表彰などを受賞。より地域に根差し、顧客本位な仕事をしたいと感じシグマ株式会社に入社。ファイナンシャルプランナーの上級資格である(CFP)を保有し、ライフプランに基づいた資産形成や資産運用のアドバイスはもちろんのこと相続や不動産など資産全般の相談に強みを持っている。
【趣味】 フットサル

【座右の銘】 思考は現実化する