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年末の今読んでほしい!証券口座の損益通算に関するポイントと注意点

2022年12月22日


もう少しで今年も終わりですね。年末ということで今回は税金の話、具体的には証券口座の「損益通算」についてのポイントや注意点などについてお話ししたいと思います。

税金の計算はその年の「1月から12月まで」で計算されますので、損益通算するためには12月末までに手続きをする必要があります。

取引の都度、利益が出た場合に源泉徴収され、基本的には確定申告不要な「特定口座・源泉徴収あり」で資産運用されている方を前提にします。

 

譲渡益と譲渡損との通算

まずは現時点でどのくらい利益がでているのか確認しましょう。仮に楽天証券をお使いの場合は、「特定口座損益(譲渡益税)」より簡単に確認ができます。例えば今年100万円利益(確定利益)が出ている場合には、約20万円の税金がすでに差し引かれているはずです。そこで、年内に損失(譲渡損)を50万円出すことで、トータルの利益は50万円となり、譲渡益税50万円×20.315%≒約10万円が証券口座の預り金にもどってくるのです。

配当金と損金の通算

この損益通算は、株式や投資信託の売却だけでなく、株式・投資信託の配当金や債券の利金も対象となります。例えば今年配当金を100万円(税引き後は80万円)受け取っている場合、年内に損失を50万円出せば、配当金の受取時に差し引かれた20万円のうち、損失を出した50万円×20.315%≒10万円が戻ってきます。

 

その際、注意点が2点あります。

1つ目は、投資信託の分配金の場合、損益通算の対象になるのは「普通分配金」のみとなり、「特別分配金(元本払戻金)」はそもそも税金が引かれていませんので、対象外です。

2つ目は、株式の配当金を証券口座内で損益通算するには、国内株式の配当金の受取方法を「証券口座の預り金に入金(株式数比例配分方式)」にする必要があります。それ以外の受け取り方法の場合、税金を還付するには別途確定申告が必要です。

 

自動で損益通算をしてくれるのは、同じ金融機関内の取引のみ

確定申告せずに損益通算をしてくれるのは、あくまで同じ金融機関内での売買のみです。他証券をまたぐ場合は確定申告が必要です。

もし確定申告をせずに済ませたい場合は、証券を移管することで対処が可能です。

例えばA証券会社で今年100万円利益がでており、B証券会社に100万円損失している銘柄がある場合、B証券会社からA証券会社に証券(株や投資信託)を移管してA証券で売却することにより、確定申告せずに損益通算ができます。その際、事前に移管先の金融機関でその証券が取り扱いがないと移管ができませんので、あらかじめ調べておきましょう。

また、証券の移管には種類によっては1週間程度でできるものもあれば1ヶ月程度かかる証券もございます。年内に間に合うように事前に問い合わせなどしてから移管するようにしましょう。

3年間の繰越控除

反対に、今年損失を出している方で年内に利益を確定できそうな証券がない場合、3年間損失を繰越しすることができます。今年の譲渡損益がマイナスで他に利益がでる証券がない場合、忘れずに確定申告で譲渡損失の3年間繰越控除の申請をするようにしましょう。

 

損益通算のためだけに本当にその銘柄を売っていいの?

よくあるのが、今年利益がでている口座で含み損の銘柄がある場合、「パフォーマンスも良くないし、損切りしよう」と売却してしまった後に、大きく値上がりしてしまったというケースです。そうならないためにも、売却する際には単純に損益通算による税金のメリットを考えるだけでなく、その銘柄を今売って本当に良いのかも考えた上で判断するようにしましょう。

もし「この銘柄はまだ上がりそうだな」と判断し、今後も継続保有したい場合は、損切りして売った銘柄を翌日買い戻せば今後値上がりした時に値上がり益をとることが可能です。しかし、取得価格は買い直した際の低い価格になるため、将来的に株価が上昇したときにその分税金が引かれてしまいます。あくまでも税金を繰り延べているに過ぎません。これをわかった上で売買する分には良いと思いますので、知識として知っておくといいでしょう。

売却した銘柄が今後値上がりが期待できない場合には、そのまま現金にしておくのも手ですし、他の投資先に振り分けるのも良いかと思います。

先程のケースとは逆に今年損(確定損)がでている場合についても考えてみましょう。今年の損失金額までは非課税で売却できることになるため、利益が出ている銘柄を売却することで損益通算できます。この時も先程と同じ考えで、売却した銘柄がその後大きく値上がりしてしまうというケースが考えられます。もし「今後も値上がりしそうだけど損益通算したい」という判断になった場合は、売却した銘柄を翌日に買い戻しをするというのも一つの手でしょう。

また、特に利益がでている銘柄がない場合は、今年の損失分は3年間の繰越控除の確定申告することで、来年以降3年間損失を繰越しすることが可能です。

以下に、損益通算する際に考えられる主なケースをまとめました。ご自身がどのケースにあてはまるか確認してみましょう。

3つの注意点

 

受渡日に要注意

「いつまでに売却すれば年内の損益通算に間に合いますか」というご質問をよく受けます。ご注意いただきたいのが、年内に損益通算するには、「約定日が年内」ではなく「受渡日が年内」でなくてはなりません。

約定日が年内でも、受渡日が年をまたいでしまう場合には翌年の損益計算の対象になってしまうため、スケジュールをあらかじめ確認しましょう。

また、商品によって受渡日が異なりますので、商品ごとの受渡日を把握し、年内の損益通算に間に合う日にちを確認しておく必要があります。

例えば国内株式の場合、約定日から3営業日目(約定日+2営業日)が受渡日となります。

今年(2022年)だと受渡日が12/30(金)に間に合うように売る必要があるので、

12/28(水)が年内の損益通算の対象となる取引日です。

ご注意いただきたいのが、投資信託です。銘柄によって受渡日が違います。加えて、海外休業日があったり、約定日がご注文日の翌日のものもあったりしますので、売却を検討されている場合は事前に調べた上でお日にちに余裕を持ってご売却ください。

 

②確定申告することで社会保険料などが上がってしまう

株式等の確定申告をすることで社会保険料が上がってしまうことがあります。損益通算による税金の減少分よりも社会保険料の増加分の方が多い場合には、確定申告を避け、証券を移管して同一証券口座内で売却するなどの方法をとると良いでしょう。

 

③確定申告することで配偶者控除や扶養控除の対象から外れてしまう場合がある

これは専業主婦(夫)の方など、扶養に入っている方が対象です。申告することで専業主婦(夫)にとっては税還付のメリットがありますが、夫(妻)にとっては配偶者控除が使えなくなってしまうケースでは、増税になってしまうことも考えられます。トータルで税金負担額がどうなるかを考える必要がありますね。

 

いかがでしたでしょうか。12月は忙しく、あっという間に終わってしまうものです。「あっ、損益通算しようと思っていたのに年が明けてしまった・・・」ということがないように、今回このコラムを見ていただいた方は今すぐに今年の損益状況を確認しましょう。

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執筆者  藤原 達彦

シグマ株式会社 執行役員
ファイナンシャルプランナー(CFP)
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

九州大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事し、営業表彰などを受賞。今まで以上にお客様視点で物事を考え、一人でも多くのお客様の役に立ちたいとの考えからシグマ株式会社に入社。丁寧なヒアリングとライフプランからお客様毎の課題を明確にし、最適な資産運用提案を心がける。

【趣味】自己啓発、四季報の読破、お酒、トレーニング・ジョギング

【座右の銘】継続は力なり

【講師実績】 名古屋証券取引所IRエキスポ2017、2018