ここ数年、世界中で堅調な株価上昇が続いています。
米国の株価指数S&P500は、過去5年に渡って史上最高値を更新しながら上値を追い続け、リーマンショック後の底値から約4倍の水準に達しました。
日経平均株価も6年連続で上昇しており、東証一部の時価総額は700兆円を突破。2018年は大発会から高騰し、気分よく1年のスタートを切れた方も多いのではないでしょうか。
リーマンショックの悲劇を乗り越えた後は、快適な適温相場の条件が整い、多くの投資家が着実に利益を重ねてきました。
とはいえ、株高は進んでいるものの、日本国内で日常生活を送っていると景気回復を実感することはあまりありません。市場は「適温相場」が続いているものの、「体感温度」は低いままです。なぜ景気回復の実感が無いまま、株高が進んでいくのでしょうか。
理由として考えられるのは、2008年のリーマンショック後に、米国・欧州・日本で相次いで導入された金融緩和です。あり余る資金が株式をはじめるとするマーケットに流入し、長期の株高が支えられています。
景気も数値上は上向いています。IMF(国際通貨基金)によると、2018年の世界経済の予想成長率は3.7%。日本はかつての「いざなぎ景気」を超える戦後最長の景気拡大が続いており、米国も2019年7月には過去最長の景気拡大の記録を達成する見込みです。
金融緩和に加えて、世界的に好調な企業業績、米国の税制改革法の成立も、相場上昇に拍車をかけています。
米国ではアップルやフェイスブック、アマゾンなどのスター銘柄の人気が市場を牽引し続けています。日本市場も、大きなウエイトを占める自動車や半導体などの銘柄が、世界の景気回復に敏感に反応し、上昇しています。
懸念材料をあげるとすると、1つは米国の利上げです。
リーマンショック以後、FRB(連邦準備制度理事会)は景気浮揚のために金融緩和を続けてきました。ゼロ金利政策と、国債の買い入れなどによる量的緩和を同時に行ったため、投資家にとって心地よい適温相場が形成されました。
なお、適温相場のことを”ゴルディロックス相場”と呼ぶことがあります。ゴルディロックスとは、英国の童話「3びきのくま」に登場する少女の名前です。物語の中で、少女が三種のお粥の味見をし、熱すぎるお粥でもなく、冷たすぎるお粥でもなく、ちょうどよい温度のお粥を選ぶというエピソードから来ています。
FRBは、景気回復が明らかになるにしたがい、出口戦略を模索し、慎重に実行に移してきました。2018年および2019年中にはそれぞれ3回の利上げを実施すると見込まれており、利上げによって市場は引き締まり、一時的に株価が下落する可能性があります。タイミングや投資家の心理状態によっては、上昇した株価に冷や水を浴びせる結果になるかもしれません。
もう1つの懸念は、北朝鮮情勢です。
核実験やミサイル発射と続ける北朝鮮と、米国との対立が激しくなっています。金正恩とトランプ大統領の間では、メディアやツイッターを通じてまるで子供の喧嘩のようなやり取りが繰り広げられており、今後の行く末が不安視されます。
現在のところは言葉の応酬が過熱しているだけで軍事衝突の危険は低いと考えられますが、北朝鮮がどんな動きをしてくるかは全く予測不可能であり、偶発的な出来事をきっかけにして、他国を含めた国際情勢が大きく変わる可能性もあります。
米国では2月に、FRBの議長がイエレン氏からパウエル氏に交代します。パウエル氏は利上げに慎重なスタンスをとっており、イエレン氏と同様に、市場環境に配慮しながら丁寧に実行に移すことが予想されます。また、減税によって企業の税引後の利益が増加するため、その分、積極的な事業拡張や株主への還元が行われることが想定されます。堅調な実態経済や税制改革を背景にして、さらなる株高への期待が高まります。
また、著名投資家のウォーレン・バフェットは2018年初にタイム誌へ寄稿し、「(米国)経済の奇跡のゲームは、まだ始まったばかり。米国人は将来、今よりもっと豊かになる」(This game of economic miracles is in its early innings. Americans will benefit from far more and better ‘stuff’ in the future)と述べました。米国経済への高い期待がうかがえます。
日本では4月に日銀の黒田総裁の任期満了、9月に自民党総裁選挙が控えています。安倍首相は黒田総裁を信頼していると明言しているため、黒田総裁の再任は確実視されています。また、安倍首相の支持率は安定しているため、続投により株価を意識した積極的な金融・財政政策が維持される可能性が高いでしょう。
以上をふまえると、当面は適温相場が維持され、世界的に株価の上昇基調が続くと考えられます。様々なリスクを注視する必要はあるものの、市場環境は基本的には良好であり、過度に悲観する必要はないでしょう。
一時的な下落は起こりえますが、株式への長期投資を主体にする投資家であれば、慌てずに株価が戻るのをじっと待つのがよいでしょう。