投資経験が豊富で、相談者を理解してくれて親身で、儲かりそうな資産を知って、適切なアドバイスを与えてくれる人…。これからあなたが資産運用の相談を行う人を探すにあたって、そのような人が見つかれば理想的です。しかし、現実はそのようなアドバイスが可能な人は存在しないと考えてよいでしょう。しかし、その理想に近いビジネスを行っている人は、日本では少数ですが存在します。本稿では、あなたが資産運用の相談先を探すに際して心がけておくべきこと、どのような人がふさわしいのかについてご説明します。
ここ数年、金融業界でフィデューシャリー・デューティーという単語を聞く機会が増えてきました。
若干の意訳ですが、フィデューシャリーとは「信認を受けた者」のこと、つまり本稿のテーマで言えばあなたから資産運用の相談を受けた人です。フィデューシャリー・デューティーとは、資産運用の世界で言えばフィデューシャリーの義務として、「顧客に忠実に業務を行うこと」、「顧客の利益を追求すること」、「顧客が負担するコストの合理性と開示」などが挙げられます。
あなたが資産運用を相談する先として一番重要な点は、フィデューシャリーとしてあなたの相談を受けるにあたって上記の義務をしっかりと守ることができる人か否か、なのです。
上記のフィデューシャリー・デューティーの概念に照らして、あなたが最も避けるべき相談相手は銀行や証券会社に所属するセールスパーソンかもしれません。
彼らの仕事は、所属する会社が推奨する特定の投資信託、変額保険、仕組み債などの金融商品を、顧客の属性や資産状況などの適合性に関係なく販売する傾向があります。決して、あなたの資産運用に対して適切なアドバイスを行うことが仕事ではないのです。
また、多くの金融機関では、担当者が定期的に転勤をしてしまうことがあります。本来、資産運用を成功させるためには長期的な視点が不可欠で、相談相手がコロコロと変わってしまうことはデメリットとも言えるでしょう。顧客と長いお付き合いになると思えば、より責任のある提案をするかもしれませんが、もし2~3年程度であれば、担当者の責任感も弱くなってしまいがちです。このことが、短期的に保有商品を売買させる「回転売買」の温床となっているのかもしれません。(「回転売買」は手数料稼ぎではないかと金融庁も指摘しています。)
このことから、銀行や証券会社のセールスパーソンは先述したフィデューシャリー・デューティーにおける「顧客に忠実に業務を行うこと」とはまだまだ乖離があるように思います。
もしあなたが、資産運用についてある程度の知識と経験を持っていれば、複数の提案商品の中から「自分に合った良質なものを選ぶ」ことは可能といえます。一方で、知識や経験が少なく、適切な資産運用のアドバイスを求めたい場合には、別の相談先を探す必要がありそうです。
資産運用の難しさは、どのような金融資産に投資しても必ず利益が出るとは限らないため、儲かるためにはどうすれば良いか、どのような資産に投資すればよいかという問いに対して誰も答えを持ち合わせていない点にあります。この点で、もしもあなたの相談相手が、会社都合の金融商品を販売するという目的と解決策しか持たない人だったとすると、一時的にうまくいくことがあったとしても、長い目で見たときの結果は火を見るよりも明らかでしょう。資産運用はギャンブルではないので、長期的に資産が殖えていくことが大切なはずです。
もちろん、最終的に何に投資するかを決めるのはあなた自身です。
しかし、あなたの年齢・家族構成・資産運用の知識と経験・保有資産の種類・運用の目的や目標水準・想定される今後の人生イベントを総合的に判断した上で、あなたに対してこの金融資産であればこれだけのリスクがあるから、この程度の投資金額・投資配分が良いだろうと、情報提供とアドバイスをしてくれる人は存在します。いわゆる、ファイナンシャル・プランナーと呼ばれる人たちです。
多くの銀行や証券会社は、社員にファイナンシャル・プランナーの資格取得を奨励しています。なかには取得を昇進の要件としている会社もあるほどです。
しかし、ファイナンシャル・プランナーの資格を保有していると言っても、銀行や証券会社に所属している以上は、営業方針の縛りがあるため、顧客のライフプランに合わせた資産運用プランを提示することは容易ではありません。
ここで、独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)という職種をご紹介します。
IFAとは、金融商品仲介業者として内閣総理大臣に登録したうえで証券会社などの金融機関と業務提携関係を結び、顧客に資産運用のアドバイス等を行う専門家です。アメリカでは資産運用の専門家として一般的に知られた職種ですが、日本でもようやく広まりつつあります。
IFAの大きな特徴は、証券会社や銀行などの金融機関とはあくまで顧客に対し金融商品供給や口座機能提供などのために提携(複数社と提携しているIFAも多いです)しているだけであり、金融機関に所属しているセールスパーソンではないということです。つまり、先述した銀行や証券会社とあなたの間に存在していた「利益相反」の懸念が少ないのです。IFAは自身を束縛する組織が無いため、顧客であるあなたは独立的な立場からアドバイス受けることが可能なのです。
日本にいるIFAは、銀行や証券会社の顧客無視も甚だしい営業姿勢に疑問を感じ、独立を決意した志のある人たちがたくさんいます。先述のフィデューシャリー・デューティーを旨として活動を行っている人たちです。なぜなら、IFA先進国のアメリカではIFAにとってフィデューシャリー・デューティーが何よりも重要であるという考えが広く浸透しているからです。そして、顧客の期待に沿うためには金融商品に限らず不動産や相続などの専門的な知識も必要であることを十分に認識しており、高い専門性と多様な情報源を備えています。あなたの幅広いニーズにも十分対応してくれるでしょう。
資産運用の相談先として、IFAがひとつの候補であることはご理解いただけたかと思います。しかし、幅広い専門知識を持つIFAと言っても各人それぞれ個性や得意分野・不得意分野があると思いますので、いろいろなIFAと接触しあなた自身に合うIFAを探してみることをおすすめします。
株式・投資信託・つみたて投資など資産運用の特徴と注意点がよくわかる!
無料オンラインセミナーの詳細はこちら