資産運用
2019年3月28日
投資や資産運用は、「難しい」とか「失敗しそう」というイメージがありますね。実際に、なかなかうまくいかずに途中でやめてしまう人が多いのも事実です。では、本当に投資は難しいものなのでしょうか?
証券投資をする際の選択肢として、投資先はいくつかあります。株式や債券、REIT(不動産の投資法人)、また地域では先進国、新興国などに分けられます。そしてそのほとんどにおいて、長期的には上昇を続けており、下落の時期の方が少ないと言えます。実際に私たちがお金を投じる投資信託についても、長期的に考えればマイナスになる可能性が低いと言われていますね。これは本当なのでしょうか?そこで、今回は長期運用実績のある投信について調査をしてみました。
モーニングスター社のデータによると、15年以上の運用実績がある投信は256本(純資産30億円以上)です。そのうち運用開始以来で現状がマイナスになっているものは何本くらいだと思いますか?
答えは12本です。つまり、全体の5%程度はマイナスになっているものの、残りの95%の投資信託はプラスのリターンが得られたということになります。ちなみに、損失になった12本の内訳は、1本が「金(ゴールド)」関連、1本がレバレッジ型、10本は日本株投信でした。日本株投信が足を引っ張っているようですが、256本の投信のうち4割近くが日本株型の投信ですので、ある程度は仕方のないことかもしれません。
この結果から言えるのは、どの投信を選んでいたとしても、途中でやめなければ「失敗しにくかった」ということです。
(ただし、このデータには、信託期間が10年などと定めれている主に「テーマ型」投信や、純資産が少なくなり償還されてしまった投信などは含まれていないので、「投信ならなんでもいい」と言うわけではありません。)
次に、これらの投信のパフォーマンスについて考えてみます。最も運用パフォーマンスが高かったのは、欧州株式ファンドで、22年の運用でなんと8倍以上のリターン(年率30.97%!)でした。これは、地域性もあり特殊要因ともいえるので、この投信をピンポイントで選ぶことは難しかったかもしれません。
しかし、それ以外の投信をみても、全体の半分近い(約45%)115本の投資信託が2倍以上のリターンをだしていたのです。
「概ねどれを選んでいても損することはなく、半分近い確率で資産が2倍になった」わけです。このような結果から、投資は決して難しいものではないと言えるのではないでしょうか。
では、どうして投資が「難しい」イメージになってしまうのでしょうか。これは、近年注目されている行動経済学によって解決できるかもしれません。人は、頭ではわかっているものの、ついつい感情的な判断をしてしまいがちです。
突然ですがここで質問です。あなたなら、次のどちらを選びますか?
質問1
A 確実に9万円もらえる。
B コインを投げて表がでたら20万円もらえるが、裏が出たら
何ももらえない。
続いて、質問2です。
C 確実に9万円を没収される。
D コインを投げて裏が出たら20万円を没収されるが、表が出たら
何も没収されない。
これは、有名なプロスペクト理論の例ですが、質問1では、多くの人がAを選択するそうです。Aの方が確実性が高いのでメリットがあるように感じますね。ただ、期待値を計算するとBの方が高いのです。 (この事例の場合、Aは100%の確率で9万円がもらえるので、期待値は9万円です。Bは50%の確率で20万円がもらえるので、期待値は10万円ですね。)
また、質問2では、Dを選ぶ人が多くなります。期待値を計算すると、Dのほうが損をする確率が高いことがわかります。
(C:期待値: -9万円 D:期待値: -10万円)しかし、現実はDが選ばれることが多くなるのです。
人間は「利得の獲得」よりも、「損失の回避」を強く思考する傾向にあるようです。そして、利得よりも損失の方を2.25倍程度重く受け止めるとも言われています。
これを資産運用に当てはめると、「確率的には長期的にうまくいくことが多くても(前述)、一時的な損失に耐えられなくなる」理由が見えてきます。頭ではわかっていてもとにかく損をしたくない気持ちが、合理的でない判断をしてしまうのです。先ほどの256本の投資信託も直近1年間はその9割程度がマイナスですし、リーマンショック時にはほとんど例外なく価格は半分くらいまで値下がりしています。
では、どうしたらこういった「損失回避」の罠から逃れられるのでしょうか?
ポイントは3つあります。1つ目は、中長期の目標を明確にすることです。中長期的な目標がしっかりしていれば、途中の下落局面でも踏ん張って乗り切ることができるはずです。2つ目は、自分のリスク許容度を知ることです。実は人によって、値下がり時の感じ方は違います。同じように100万円の値下がりだったとしても、1億円持っている人は1%のマイナスですが、200万円の資産の人であればマイナス50%になります。自身の運用資産がどのくらいのマイナスまで耐えられるかを予め考えておくことは大変重要なのです。3つ目は、下落局面で何が起きているかを知ることです。何が起きているのかがわからないことに、人間は最も恐怖を感じます。ある程度の知識や経験がある人は、下落理由をしっかりと分析できるため、慌てずに対処できるのかもしれません。こんな時に客観的な視点でアドバイスをしてくれる人がいると頼もしいですね。
そういう意味で本当のアドバイザーとは、単にいい商品を選んでくれる人ではありません。上記のポイントを押さえながら、その人に適したプランを提示してくれる人と言えるのではないでしょうか。
また、こんなケースはどう考えたらいいでしょうか。特に年配の人から言われることですが、「もう長期では考えられない」という場合です。結論は簡潔ですね。「リスクの高い投資をしないこと。」です。そのように感じる方は、そもそも運用をしないか、リスクの低い(価格変動が小さい)運用を心がけることが重要なのです。