「投資信託の売り時はいつ?」
「投資信託の売却タイミングはどうやって判断したらいいの?」
相談の現場では、よくこのような質問が寄せられます。投資信託で資産運用を始めたものの、出口戦略や売却のイメージができていない人も少なくありません。
投資信託は基本的にいつでも売却できます。しかし、投資信託は株式と違ってリアルタイムで売買することができないため、売り時を判断するのは難しいといえるでしょう。
今回は、投資信託売却のタイミングをはじめ、投資信託を売却する際の注意点や自動定期売却サービスの活用方法について紹介していきます。
売却できる期間が設定されている投資信託もありますが、基本的にほとんどの投資信託は証券会社の営業日であればいつでも売却できます。
NISA口座で運用している投資信託も同じようにいつでも売却できます。2024年から始まった新NISAの制度では、売却した枠は翌年に復活します。そのため、翌年以降にその枠を使って再び非課税投資ができるようになりました。
とはいえ、投資信託の売り時を判断するのは難しいかもしれません。投資信託の売却を判断するポイントは次のとおりです。
投資信託の売却を判断するポイントの1つめは、ライフイベントに合わせて売却する方法です。
ライフイベントには、住宅購入やお子さまの大学費用、介護費用などさまざまな場面があります。ライフイベントではまとまった支出が想定されるため、これらのタイミングに合わせて売却するのもよいでしょう。
ただし、ライフイベントに合わせて売却する場合、その時点で必ず利益が出ているとは限りません。場合によっては相場が大きく下落している可能性もあります。そのため、ライフイベントの数年前から少しずつ売却を進めていくのもひとつの方法です。
大きく値上がりした時に売却する
売却を判断するポイントの2つめは、投資信託が大きく値上がりしたタイミングです。
ただし、感覚的に「大きく値上がりしたから」と思って売却するのはおすすめしません。一部の商品が大きく値上がりすることで、ポートフォリオの資産配分や組み入れ商品のバランスが変わってきます。投資信託が大きく値上がりした場合、投資信託の一部を売却して別の商品を購入することになります。このように、ポートフォリオを当初の配分に修正することを「リバランス」といいます。
いずれにせよ、資産運用をする際には一貫したルールや設計図といった「軸」が必要となります。
資産運用の「軸」については、こちらのコラムをご覧ください。
あなたの資産運用に「軸」はありますか?
資産運用の「軸」やルールを設けていないと、投資信託の売り時を判断するのは大変難しいといえます。
「もっと上がるかも…」「もっと下がるかも…」といった感情や感覚に頼って売買を繰り返すと、大きな損を出してしまう可能性があります。このような事態を防ぐためには、IFAやFPなどの専門家に助言を求めるのも一案です。
相場の変動に左右されるのではなく、「ライフイベントに合わせて売却する」「リバランスで一部売却する」など資産運用の「軸」が重要となります。
投資信託を売却する際の注意点は次の2つです。
手数料や税金を考慮する
投資信託を売却するときには、一般的に以下の手数料・税金が発生します。
・信託財産留保額
信託財産留保額とは、投資信託を売却する際に負担する費用のことをいいます。信託財産留保額はほとんどの投資信託に設定されており、詳細は目論見書に記載されています。
・所得税、住民税、復興特別所得税
投資信託の売却によって利益が出たときは、その利益に対して所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%の税金が課せられます。
源泉徴収ありの特定口座で運用している場合は、税金が引かれた状態で入金されます。
また、NISA口座で運用している場合はこの税金が非課税となります。
売却する額が大きければ大きいほど、これらの手数料や税金は多く引かれます。そのため、売却時には手数料や税金を考慮し、「手元に入るお金はいくらか?」を確認する必要があります。
投資の目的を再確認する
投資信託を売却する際には、資産運用の「軸」やルールを見直し、今いちど投資の目的を再確認するようにしましょう。
投資信託を購入する時点で「10年後に控えた子どもの大学費用として運用する」といった目的を決めておけば、時期が到来したときに悩むことなく売却できます。
投資信託を売却するタイミングを判断するのは難しいため、自動定期売却サービスを活用するのがおすすめです。定期売却とは、保有している投資信託を毎月決まったタイミングで自動的に売却し、現金を受け取ることができるサービスです。
一度設定すれば売却の手間を省くことができ、さらに運用しながら資産を取り崩せるというメリットがあります。
定期売却の方法は「定率取り崩し」と「定額取り崩し」の大きく2種類に分けられます。
定期売却の詳しい説明については、こちらのコラムをご覧ください。
老後の効果的な資産設計!退職金は、「〇〇売却」がおススメ
定率取り崩しとは、「保有口数の4%」のように投資信託の口数の一定比率を取り崩していく手法です。
一定比率で取り崩していくため、投資信託の基準価額が高いときには取り崩す額が大きくなり、投資信託の基準価額が下がったときには取り崩す額が小さくなります。投資信託がゼロになることはないため、定額取り崩しよりも資産寿命が長く維持できるというメリットがあります。
定額取り崩しとは、「毎月20万円」のように一定金額を取り崩していく手法です。
定額取り崩しでは、投資信託の基準価額が下がったときでも一定金額を取り崩すため、定率取り崩しよりも資産寿命は短くなります。一方で、毎月取り崩す額が決まっていることから生活費の計算がしやすく、生活水準を変えずに済むというメリットがあります。
60代 女性
運用資産 6,000万円
「運用資産をどのように取り崩していったらいいのかわからない」というご相談でした。
当社では、ライフプランシートを基にお客様の状況を詳しくヒアリングしており、「リスク許容度」「将来の目標や要望」「収支の状況」などをお聞きした上で最適なご提案をしています。
ヒアリングの結果「なるべく毎月決まった額を受け取りたい」「面倒な手続きはしたくない」といったご要望があったため、以下のようなご提案をしました。
取り崩し開始年齢:65歳
毎月の取り崩し額:20万円
取り崩し方法:定額取り崩しの自動売却サービスを活用
運用せずに毎月20万円を取り崩していった場合、90歳を迎えると資産が枯渇してしまいます。
一方、年率3%で運用しながら毎月20万円を取り崩していくと、110歳程度まで資産が枯渇しないことがわかりました。
「投資信託の最適な取り崩し方法がわからない」「どのように売却していったらいいかわからない」「自分でシミュレーションするのは難しそう」と思われる方は、信頼できるIFAやFPに相談することをおすすめします。
投資信託の売却をはじめ、「運用資産をどのように取り崩していくか」を考えることは事前のライフプランシミュレーションや計画が非常に重要です。
ライフプランシミュレーションを綿密に行うことで、資産寿命を少しでも長く保ちながらご自身に合った取り崩しができるようになります。
今回は、投資信託売却のタイミングをはじめ、投資信託を売却する際の注意点や自動定期売却サービスの活用方法について紹介しました。
投資信託を売却するタイミングは「ライフイベントが発生するとき」や「ポートフォリオをリバランスするとき」などが挙げられます。しかし、投資信託を売却するタイミングを個人で判断するのは大変難しいといえるでしょう。
証券会社のサービスのひとつである「自動定期売却サービス」を活用することで、運用しながら毎月自動的に取り崩すことができます。老後の年金のように受け取れるため、大変便利なサービスといえるでしょう。
投資信託の売却方法やタイミングは人それぞれ。迷ったときはIFAやFPに相談してみてはいかがでしょうか。
シグマ株式会社
ファイナンシャルプランナー(CFP)
大学卒業後、大和証券に入社。 個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。営業表彰などを受賞。より地域に根差し、顧客本位な仕事をしたいと感じシグマ株式会社に入社。ファイナンシャルプランナーの上級資格である(CFP)を保有し、ライフプランに基づいた資産形成や資産運用のアドバイスはもちろんのこと相続や不動産など資産全般の相談に強みを持っている。
【趣味】 フットサル
【座右の銘】 思考は現実化する